【映画レビュー】スノーピアサー / Snowpiercer
2013年、最後の試写で観たのは、この映画『スノーピアサー』でした。
思わず圧倒され、この映画で2013年を締めくくれたことを思わず感謝してしまったこの作品。
寓話であり、近未来SFであり、エンターテインメントであり、政治的な物語であり。
圧倒的で壮大な世界観の中で、奇妙で個性的なキャラクターたちが強い意志を持って行動していくこの物語は、いろいろな要素が入っていながらも、観客の心をグッと惹き付ける、パワフルなエンターテインメント作品の傑作だと思います。
<STORY>
地球が氷河期に突入した時代、永久不滅のエンジンを有するウィルフォード産業の列車「スノーピアサー」に乗り込んだ人類だけが生き残っていた。前方の車両には富裕層が乗り込み、貧困層はスラム街のような最後尾の車両に押し込められている。最後尾に暮らすカーティスは、仲間と革命を企て先頭車両を目指す。列車が走り始めて17年、初めて最後尾から出たカーティスは、寿司屋や植物園まである前方車両の優雅な暮らしぶりを目の当たりにし…。
<解説>
2014年7月1日、地球温暖化を防ぐため79カ国によって人工冷却物質が散布され、地球は新たな氷河期に突入してしまった…。
そんな、近未来のパラレルワールドに生きる人類が乗り込んだのは、永久不滅のエンジンを有し、地球を1年かけて一周するウィルフォード産業が作った列車「スノーピアサー」です。
雪を突き抜けては知るこの列車には、氷河期になる前の地球の環境を再現する植物園や水族館もあり、寿司屋やサウナ、クラブまであり、生き残った富裕層たちは優雅に暮らしています。
しかし、最後尾に暮らす貧困層の人びとは、おいしくもないプロテインバーだけを与えられ、スラム街のように汚い車両の中で飼い殺しにされていました。
時々、総理のメイソンがやって来ては、最後尾で生まれた子どもたちを連れて行きます。
そんなメイソンに逆らった最後尾の人間は、見せしめに手や足を切られたりもすることも。
そんな状況に業を煮やしたカーティスは、革命を起こそうと、最後尾から出て前方車両を目指し始めます。
この映画の前半は、クリス・エヴァンス演じるカーティスと仲間達が、最後尾の列車から出て行くまでの物語です。
カーティスと、ジェイミー・ベル演じるエドガー、オクタヴィア・スペンサー演じるタニヤ、ユエン・ブレムナー演じるアンドリューらは、ティルダ・スウィントン演じるメイソン首相を武力で脅し、初めて最後尾を出て行くのです。
そして映画の後半で彼らが目にするのは、現代のノアの箱船とも言えるスノーピアサーの中にある、めくるめく世界。
薄汚れて汚い最後尾とはまったく違う世界が、そこに広がって行くのです。
前方車両に暮らす人びとは、無邪気にエド・ハリス演じるウィルフォード産業の総帥を信奉し、彼の言うがままに享楽的な生活を送っています。
自由なはずの前方車両の人びとも、別の形でウィルフォードに支配され、世界を形作っているだけなのです…。
カーティスはそんな前方車両の人びとを押しのけ、最前車両に暮らすウィルフォードに会うため、ひたすら前に進み、彼が作った“スノーピアサー”という世界の全貌を知るのですが…。
『グエムル 漢江の怪物』、『母なる証明』などの作品で知られる韓国出身のポン・ジュノ監督は、“スノーピアサー”という一人の支配者が支配する世界を、カリカライズさせた形で見事に作り上げています。
そこには差別があり、格差があり、支配者があり、搾取される弱者があり。
ただどこに生まれるかだけで、列車の中での待遇が決まり、人びとはただ与えられた環境の中で死んだように生きるだけ。
そんな淀んだ環境の中でも、あるきっかけや刺激があれば、人びとは意識を覚醒させて立ち上がろうとする。
人間が描いたシナリオは、必ずどこかで破綻し、予想外の展開を起こす。
それはある種の絶望ではあるけれど、どこかに希望がある…。
ポン・ジュノの描く世界は、まさに映画的で、映画だからこそ表現できるような寓話のように象徴化された世界です。
そんな寓話のような世界を、役者たちが見事に体現してみせています。
特に注目せざるを得ないのは、やはりメイソン総理を演じるティルダ・スウィントンでしょう。
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』で演じた耽美な吸血鬼とはまったく違う、丸メガネに出っ歯な偏向したおばちゃん首相になりきっています。
そして個人的に目が離せなかったのは、スノーピアサーの中の教師を演じるアリソン・ピル。
ウィルフォードを盲目的に信じ、選民思想を持ってなんの疑いもなく子どもたちの思想を洗脳していくお人形のように美しい白人の女教師の姿は、一見笑わせてくれますが、ちょっと背筋が寒くなるような恐ろしさもありました。。。
盟友である俳優ソン・ガンホと共に見事な世界デビューを果たしたポン・ジュノ監督。
これからも世界的に活躍してくれることと思います。
ポン・ジュノと言い、『ラストスタンド』のキム・ジウンと言い、『イノセント・ガーデン』のパク・チャヌクと言い、韓国出身の監督は本当に世界で活躍していますね。。。
『スノーピアサー』(125分/韓国=アメリカ=フランス/2013年)
原題:Snowpiercer
韓国語題:雪國列車 설국열차
公開:2014年2月7日
配給:ビターズ・エンド、KADOKAWA
劇場:TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて
原作:ジャン=マルク・ロシェット/ジャック・ロブ
監督・脚本:ポン・ジュノ
プロデューサー:パク・チャヌク/イ・テホン
脚本:ケリー・マスターソン
出演:クリス・エヴァンス/ソン・ガンホ/ティルダ・スウィントン/ジェイミー・ベル/オクタヴィア・スペンサー/ユエン・ブレムナー/コ・アソン/ジョン・ハート/エド・ハリス/ルーク・パスカリーノ/スティーブ・パク/アリソン・ピル/ヴラド・イワノフ/アドナン・ハスコヴィック/クラーク・ミドルトン/ケニー・ドーティー/トーマス・レマルキス
公式HP:http://www.snowpiercer.jp/
KADOKAWA / 角川書店 (2014-06-27T00:00:01Z)
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VARES (2014-07-21)
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