【映画レビュー】母なる証明 / 마더

あまりの重苦しさに、息が詰まりそうになってしまいそうになる、映画『母なる証明』
閉鎖的な田舎町で起こった殺人事件の真相を追う被害者の母の姿…。

真相は藪の中です。
いえ、すべては母の記憶の中にあるのでしょう。。。

母なる証明 (幻冬舎文庫)

<STORY>
記憶力が弱いトジュンは、漢方薬店を営む母に溺愛されながら育ってきた。ある日、悪友のジンテを待っている間にバーで泥酔したトジュンは、帰り道の空家の前で一人の女子高生と出会う。声をかけるが相手にされず、トジュンはそのまま家に帰り眠りにつく。翌朝、その女子高生の死体が空家の屋上の手すりに掛けられた形で発見され、トジュンが容疑者として逮捕される。トジュンの母は、トジュンの無罪を証明しようと手を尽くすが…。

<解説>
さすがはポン・ジュノ監督。
“母の愛”というものの美しさ、生々しさ、いかがわしさ、身勝手さを余すところなく映し出しています。

そう、“母の愛”っていうのは、男女の愛とは違って、どこかエゴが漂うものなのですよね。
「自分の体から出て来た存在で、自分がここまで育ててきた」という自負が、そのエゴを、愛だと勘違いさせるのでしょう。

映画の主役であるキム・ヘジャの役名が映画内で一切出てこず、「オンマ(お母さん)」「オモニ(おばさん)」としか呼ばれていないのも暗示的。
この母親は、個人の個性をすべて捨て、“トジュンの母親”としての人生しか送っていないのですね。

でも、母は、禁忌を犯します。
その禁忌により、母と息子の関係はより結びつき、息子を母がいなくては生きていけないという存在にすることが出来た。
その代償はあまりにも大きいものです。

でも、人は生きていかねばならない。。。

観終わった後、こんなに恐ろしい思いをした映画は久しぶりです。

5年ぶりのウォンビンの映画出演作ですが、彼の演技も鬼気迫るものがあります。

今回のウォンビン、まったくイケメンではありません。
髪型はヘンだし、すぐ物忘れするし、立ちションすらしちゃうし…。

ウォンビンのかわいい笑顔を期待して観に行く人は絶対に期待を裏切られます。
実際に、「こんな感じの映画だと思わなかったわー。ウォンビンくんがあんな役だなんてねぇ」などと言いながら映画館を出て行くおばさまをお見かけしましたよ。

“ウォンビン主演作品”というよりも、“ポン・ジュノ監督作品”と思って観に行くべきでしょう。

あ、イケメンと言えば、トジュンの悪友・ジンテ役のチン・グくんはかなりのイケメンかも。

『母なる証明』(129分/韓国/2009年)
原題:마더
英題: MOTHER
公開:2009年10月31日
配給:ビターズ・エンド
劇場:シネマライズ、シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか全国にて
監督:ポン・ジュノ
出演:キム・ヘジャ/ウォンビン/チン・グ/ユン・ジェムン/チョン・ミソン
公式HP:http://www.hahanaru.jp/

 

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