【映画レビュー】私をくいとめて

2020/11/25 日本映画わ行, 映画レビュー

『勝手にふるえてろ』の綿矢りさ原作×大九明子監督コンビが贈る映画『私をくいとめて』。

2013年の連続テレビ小説「あまちゃん」で全国的人気を呼んだアキ×ユイで知られるのん（能年玲奈）と橋本愛が再び親友役を演じることでも話題のこの作品、おひとり様として自分らしく楽しく生きているはずの31歳の主人公が、他人を受け入れることができるようになるまでの物語。
アラサーの人たちには、響くところがあるのかもしれません。。。

＜STORY＞
31歳のおひとりさま女子、みつ子。好きな料理を作ったり一人でお出かけを楽しんだり、そこそこ楽しい毎日だ。彼女が今気になっているのは、会社にやってくる2歳年下の営業マン、多田くん。近所に住んでいる多田くんは、みつ子は手料理をおすそ分けしたりしている。脳内にいる相談役「A」はみつ子のすべてをわかっていて、的確なアドバイスをくれるのだ。年末年始、みつ子は大学時代の親友・皐月が嫁いだイタリア旅行に行くことになり……。

＜解説＞
主人公のみつ子は、31歳のおひとり様女子。
都内の部屋で一人暮らしをし、そこそこおひとり様生活を楽しんでいます。

そんなみつ子を助けてくれるのが、脳内相談役の「A」。
みつ子の悩みに、なんでも的確なAnswerを与えてくれます。

大学時代の親友・皐月は結婚してとっととイタリアに行ってしまうし、デザインの仕事をやりたくてもスキル不足でできないし、気になっている多田くんに対してこれ以上踏み込むこともできないし、みつ子の暮らしには悩み事もたくさんあります。
そんな時にいろいろと答えてくれるのが、「A」なのです。

自分の脳内のでくりひろげる妄想恋愛に関しては対応できるみつ子も、リアルに他者との関係を積み重ねていくのには、人一倍恐怖を感じてしまいます。
そんな時に助けを求めるのが、「A」なのです。

すごくみつ子を助けてくれる「A」ですが、肝心な時にいなくなったりも……。
「A」いなくなった途端、みつ子は精神的に荒れていきます。
そんな荒れたみつ子を受け止めてくれる人は、これまではいなかったのです。大好きな親友の皐月も、みつ子を置いて海外に行ってしまったし……。

この映画『私をくいとめて』では、デリケートで傷つきやすいまま大人になってしまった女性が、少しずつ大人になっていく様子を描いています。
ある意味、成長の機会を逃したまま年をとってしまった女性にとっては、現実の恋愛は恐怖の対象。
その恐怖を本当に克服させてくれるのは、脳内にいる自分ではなく、現実に存在する“自分を受け入れてくれる他人”しかいないのかもしれません。

ポップなラブストーリーのように見せてはいるけれど、実はけっこう重めな人間ドラマだったりもする本作。
このポップな中にある重苦しさが、現代を生きるアラサー女性のリアルなのかもしれません。

　
『私をくいとめて』（133分／日本／2020年）
公開：2020年12月18日
配給：日活
劇場：全国にて
原作：綿矢りさ 「私をくいとめて」（朝日文庫／朝日新聞出版刊）
監督・脚本：大九明子
音楽：髙野正樹
劇中歌：大滝詠一 「君は天然色」（THE NIAGARA ENTERPRISES.)
出演：のん／林遣都／臼田あさ美／若林拓也／前野朋哉／山田真歩／片桐はいり／橋本愛／アルベルト・ピッツォ
声の出演：中村倫也
Official Website：http://www.kuitomete.jp