台北に舞う雪　～ Snowfall in Taipei ／台北飄雪

2010/3/18 外国映画た行, 映画レビュー

台湾のファニーフェイス俳優チェン・ボーリンと、新人女優トン・ヤオの素朴で美しいラブストーリー『台北に舞う雪　～ Snowfall in Taipei』。
都会での恋と仕事から逃げて来た美女を、郊外に住む天真爛漫な男性が癒す、現代に生きるお疲れワーキング・ガールにはなかなか刺さりそうなストーリーです。

でも、この映画には、もうひとりの主役がいます。

それは、美しい台湾の景色たち。
都会の台北での人工的な光の渦や、田舎のチントンでの生命力あふれる瑞々しい自然や、美しい天燈の灯。

フォ・ジェンチイ監督は、様々なカメラワークを駆使し、台湾のいろいろな風景を私たちに見せてくれます。

＜STORY＞
台北郊外の町・チントンにメイという美女がやって来た。彼女は駆け出しの歌手で、プロデューサーへの恋心やプレッシャーから声が出なくなり、台北から失踪してきたのだ。チントンで暮らすモウは、メイの宿泊先の手配を頼まれたことから、彼女の生活を世話するようになる。メイの失踪の理由を知ったモウは、彼女の声が出るように献身的に世話をする。やがてメイを探す記者が現れ、彼女の事務所にもメイの居所が知れることになる…。

＜Cheeseの解説＞
都会で声をなくしてしまった歌手・メイ。
中国大陸のチンタオから歌手になるために台湾にやって来た彼女は、プロデューサーのレイに恋をします。
レイは、メイにとって親であり、教師であり、兄のような存在でした。
でも、レイのそばにはいつもアシスタントの美女・リサがいる。

大人っぽい美女のリサと比べて、自分はまだまだ子どものよう。自信がなくなっていきます。

そして、自信を持っていた“歌”に関してもダメ出しをされて、決定的に自信がなくなってしまう。

見知らぬ地・台湾でただひとり頼れる人だったレイとの関係が壊れ、メイは声をなくします。
そして、黙って失踪してしまいます。
なぜなら、レイに探してほしいから。

そして、行きついた土地で、メイはモウに出会います。
モウは傷ついたメイをあるがままに笑顔で受け入れ、彼女を癒します。
「あるがままの自分でいいんだ」と自信を取り戻したメイは声を取り戻し、歌も歌えるようになるのです。

そして、モウによって癒されたメイは、自らの夢を叶えるために、レイの所へ戻っていきます。
モウには感謝はしつつも、感謝以上のものを与えることはなく…。

監督は、メイやモウの心情を、縦横無尽に動き回るカメラで、描き出します。
物語の序盤に多く登場するのは、美しいけれど無機質な台北のネオンサインや車のテールランプ。
メイがモウと心を通い合わせて以降は、温かみのあるランプの光や、やわらかな天燈の灯。

都会の風景も田舎の光景も本当に美しく、南国ならではの空気の密度や生命力を感じさせる映像です。
メイの心象がミュージッククリップのように美しく描かれ、彼女の心の変化や成長を感じさせました。

この映画には、台湾映画界でこれから注目すべき若手俳優陣が多く登場しています。
主演のチェン・ボーリンは言うまでもなく、メイを演じたトン・ヤオ（チャン・ツィイーにそっくり！）、プロデューサー・レイを演じたトニー・ヤン、メイを追う記者・ジャックを演じたモー・ズーイー（Cheese的にはイチオシ）、リサを演じた美女ジャネル・ツァイ（スタイルがいい！）、地元の不思議少女・ウェンディを演じたテレサ・チーなど、見逃せない個性的な面々ばかりです。

彼ら若手俳優の演技と、台湾の美しい風景を見られるだけでも、この映画を観る価値はあるのではないかと思います。

『台北に舞う雪　～ Snowfall in Taipei』（106分／中国・日本・香港・台湾／2009年）
原題：台北飄雪
英題：Snowfall in Taipei
公開：2010年2月20日
配給：ゴー・シネマ
劇場：シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
監督：フォ・ジェンチイ
出演：チェン・ボーリン／トン・ヤオ／ニー・ヤン／モー・ズーイー／ジャネル・ツァイ／テレサ・チー
公式HP：http://taipei-snow.jp/