【映画レビュー】YOYOCHU SEXと代々木忠の世界

2011/1/16 日本映画や行, 映画レビュー

私、この作品を観るまで、恥ずかしながら代々木忠という人をまったく知りませんでした。
いや、この年齢でカマトトぶる必要もまったくないんですが、とはいえ、AVを自ら進んで見ることもないし、見る機会があったとしても監督名なんか気にしないし。

いやー、でも、すごい人なんですね。感動しました。

このドキュメンタリー映画『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』では、AV監督の代々木忠の人生を追いながら、AVの歴史をひも解き、代々木忠が常識に縛られた男女が自らの意識を開放して行く様を描いています。

「いいもの見させていただきました、ありがとうございます」と、お礼を言いたい感じです。
それにしても、男性って、こんなすごいコンテンツを女性に内緒でしょっちゅう見ているんですね。。。

＜STORY＞
“ヨヨチュウ”という名で知られるAV界の巨匠・代々木忠。彼は72歳の今でも現役で、月に1作のAVを撮り続けている。彼は福岡に生まれ、一度は極道となりながらも、ピンク映画の世界に入る。その頃、人気を博していた“にっかつロマンポルノ”で代々木が製作を手掛けた『女高生芸者』がわいせつであると摘発され、代々木は裁判で戦うことに。その裁判費用を稼ぐため、妻の真湖道代は妊娠6カ月になるまで女優として舞台に立ち続けていた…。

＜解説＞
この映画『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』は、いくつかの要素から構成されています。

ひとつは、代々木忠の人生。
ひとつは、日活ロマンポルノ裁判の証言。
ひとつは、アダルトビデオの勃興の歴史。
ひとつは、代々木忠によって自身を開放し、解き放たれていく女性たちの姿。
最後に、幼い頃の虐待によって精神を病み、多重人格になった女性たちと彼を支援してきたライターの故・笠原一幸さんと、彼の亡き後女性たちの世話をし、うつ病になってしまった代々木忠の物語。

柱が多くなった分、ひとつひとつのテーマが若干薄くなってしまったように思えます。
素直な感想を言うと、最後のテーマはなかった方が、作品としてのまとまりは良かったのではないかと思いますが、それでもあえて盛り込んだというところに、笠原さんへの石岡正人監督と、代々木忠の尊敬の思いが感じられました。

この作品を観て印象的だった言葉がふたつあります。

ひとつは、スタッフの「女優たちは男優とセックスしているのではない。カメラを通して監督とセックスしてるんだ」という言葉。

そしてもうひとつは、「女のまたぐらで飯を食っているんだから、撮影後に女の子には何かを持って帰ってもらいたい」という代々木忠の言葉。
彼は、女優を極限まで追いこんで、これまで感じたことのないオーガズムを感じさせ、これまでの自分から解放していきます。

撮影後に女優たちが、何かから解放されたような顔で「無になって、お母さんのおなかの中にいる感じだった」と涙を流しながら語っているのが心に残りました。
彼女たちは、代々木忠に導かれて自らを開放し、新たな境地に至っているのでしょう。

だからこそ、女優たちは“男優とではなく、監督とセックスしている”と言われるのでしょう。

人間の生命の基本でありながら、タブー視されることも多いセックスというテーマ。
このドキュメンタリーは、裸の体と心を見続けて来た代々木忠の生き様と、彼の姿勢が描かれています。

普段はなかなか語りにくいテーマだけに、カップルで観に行ってみてもいいかもしれません。
お互いに、自らを開放するきっかけになるかも…。

最後に。

実は私がこの作品を観に行った際、石岡正人監督と代々木忠のトークセッションとQ&Aがありました。
その中で明かされた衝撃の真実…。

観客「代々木監督は女優に自分を解放しろとおっしゃってますが、監督ご自身のセックスはどのような感じなのですか？」

代々木忠「仕事で大阪のシティホテルに泊まった時に、マッサージを呼んだんです。そしたらそのオバちゃんがすごくてね…。初めて失神して、涙が止まらなかった。その時に『ほら、気持ちよかったら声出したらええやん』『イク時は目を見て』っていろいろ言われたんだよね。…そのテクニック、今でも撮影に使わせてもらっています」

なんと、代々木忠の原体験は大阪のマッサージのオバちゃんだったそうです。。。