【映画レビュー】ヴィジット／ The Visit

2015/11/7 外国映画は行, 映画レビュー

15歳の女の子と13歳の男の子を育てている、ちょっと軽はずみなシングルマザー。
そんなママと、ママの両親との、過去のわだかまりを解こうと、初めて会うおじいちゃん、おばあちゃんの家へやってくる子どもたち。
そして、そんな初めて会う孫たちを暖かく迎える祖父母。

そんな、これまですれ違ってきた家族5人の一週間を描いた映画『ヴィジット』。

製作・監督・脚本を手がけたM・ナイト・シャマランは、きちんと向かい合ってこなかった家族たちが、初めて真剣に向かい合う様子を描いています。
もちろん、シャマランらしい恐怖とユーモアたっぷりに。。。

STORY

シングルマザーのママに育てられた15歳のベッカと13歳のタイラー。ママが恋人と旅行に行く一週間の間、姉弟はペンシルバニア州メイソンビルにある祖父母の家で暮らすことに。喧嘩別れしたママとおじいちゃんたちのために、ベッカはその訪問を記録映画にしようとハンディカメラを持ってきていた。初めて会った祖父母はとても優しかったが、夜9時にはベッドに入るという。そして夜9時を過ぎた頃、ドアの外から妙な音が聞こえてきた…。

解説

若くして家出して結婚し、夫と別れて一人で子どもたちを育てているシングルマザーに育てられた、姉弟。
その姉弟が、初めておじいちゃん、おばあちゃんに会いに行くこととなり、ペンシルバニア州メイソンビルに向かうこととなります。

映画作りにはまっている姉のベッカはカメラを持ち込み、家族のドキュメンタリーを作ろうと画策。
再会の様子を映像に記録し、おばあちゃんやおじいちゃんにもインタビューを重ねていきます。
ラッパーを目指して“T-ダイヤモンド”と名乗っている弟のタイラーも、カメラの前でラップを披露したり、ふざけたり、それなりにこの旅行を楽しんでいました。

最初はぎこちないものの、一緒に食卓を囲みいろいろな話をするうち、4人は打ち解けていきます。
しかし、だんだんと、何かがずれて始め、不穏な雰囲気が漂い始めるのです。
ベッカのカメラは、床下を這い回ったり夜中に家を徘徊するおばあちゃんや、何かと言えば小屋にこもって何かしているおじいちゃんの様子を、そっと捕らえていました。。。

かなり恐ろしくもある本作ですが、恐ろしさの中に笑える要素もたっぷり潜んでいます。
また、タイラーが演じる才能豊かなラッパー“T-ダイヤモンド”の発言も、いちいちユーモラス。
「くそっ、ケイティ・ペリー！」などと、恐怖シーンの最中にも、息抜きの笑いを入れ込んでくるのです。

実はこの作品、ベッカの撮影する映画の素材をまとめたという“モキュメンタリー”として描かれています。
ベッカやタイラーの視点から“POV”形式でハンディカメラでドキュメンタリーとして撮影された映像をそのまま描いているのです。
「パラノーマル・アクティビティ」シリーズを手がけたプロデューサー、ジェイソン・ブラムも製作に名を連ねています。

この“モキュメンタリー”という描き方により、この映画は、ベッカやタイラー、ママの心情や、おばあちゃんやおじいちゃんの状況を描くことに成功しています。

なぜベッカはドキュメンタリー映画を製作しようと思ったのか？
なぜタイラーはラッパーとして陽気に明るく振舞っているのか？
ママの奇妙なまでの子どもたちへの明るい振る舞いは、なぜなのか？

おばあちゃんは、なぜ頑なにインタビューを拒むのか？
寡黙なおじいちゃんの見つめているものは、本当は何なのか？

これらの答えが、すべてモキュメンタリーとして映像に収められているのです。

お互いを思い、ユーモアでピンチを乗り切ろうとする家族の姿を描いた本作。
その明るさやユーモアは強さでもあるけれど、本当の気持ちや本当の弱さを隠し、何者かに付け入られる隙を作り出した原因でもあるのですね。。。
でも、そのユーモアが、家族を再び結びつけ、お互いを助け合う力となる、と。。。

シャマラン監督は人間の弱さ、恐ろしさというものを、“モキュメンタリー”という形式でユーモアたっぷりに描きだしてくれました。
まさに、M・ナイト・シャマランの本領発揮というか、これからの彼の方向性を決定づける、重要な作品なのではないでしょうか。

作品情報

『ヴィジット』（94分／アメリカ／2015年）
原題：The Visit
公開：2015年10月23日
配給：東宝東和
劇場：TOHOシネマズみゆき座ほか全国にて
製作・監督・脚本：M・ナイト・シャマラン
製作：ジェイソン・ブラム／マーク・ビエンストック
音楽監修：スーザン・ジェイコブ
出演：キャスリン・ハーン／ディアナ・デュナガン／ピーター・マクロビー／エド・オクセンボールド／オリビア・デヨング
Official Website：http://thevisit.jp/