【映画レビュー】キングスマン：ファースト・エージェント ／ The King’s Man

マシュー・ヴォーン監督による「キングスマン」シリーズ第3作となる『キングスマン：ファースト・エージェント』は、レイフ・ファインズを主演に迎え、1910年代に国際的独立諜報組織“キングスマン”ができるまでを描いた、これまでとは少し毛色の変わった一作。

レイフ・ファインズというと、ジェームズ・ボンドに無茶ぶりしたりするばかりで、自分で戦闘に参加するというイメージはあまりないのですが、今作では老体に鞭打って、激しいアクションを見せてくれています。
しかも、相手になるのはロシアの怪僧グリゴリー・ラスプーチン、オランダ出身の魅惑の女スパイマタ・ハリ、ロシアの革命家ウラジーミル・レーニン、ドイツの預言者エリック・ヤン・ハヌッセン、第一次世界大戦のきっかけを作ったセルビアのテロリストガヴリロ・プリンツィプなどなど、一癖も二癖もありまくる歴史上の人物たち。

第一次世界大戦はなぜ起こったのか、世界の歴史にキングスマンはどう関わってきたのか……。大スケールで描く、マシュー・ヴォーン流の戦争映画なのでした。

1910年代、第一次世界大戦勃発前夜。
本作の主人公、レイフ・ファインズ演じるオーランド・オックスフォード公は、かつて軍人として戦争に参加したことで、戦争の無慈悲さや愛国心という名の下に若者が死んでいくことの欺瞞を感じて軍を退役し、その後は赤十字の活動をするなどして生きていた英国貴族です。

英国軍を率いる陸軍大臣のハーバート・キッチナーとも友人であり、英国王のジョージ5世とも親しい仲の彼は、非公式に自らの使用人たちとともに、使用人のネットワークを使っての諜報網を作り上げていきます。

そこで、ロシアのニコライ2世をそそのかそうとする怪僧ラスプーチンを止めるため、息子のコンラッド、執事のショーラやポリーと共にロシアに乗り込みます。そして、ラスプーチンと激しい戦闘になるのです。

このラスプーチンとのファイトシークエンス、ラスプーチンを演じるリス・エヴァンスの怪演も相まって、控えめに言って最高。まるでコサックダンスのようなオリジナリティにあふれる戦闘スタイルのラスプーチンと、青年貴族らしい初々しいコンラッド、パンツ姿で戦うオーランド、何があっても冷静沈着なポリーとのコントラスト＆コンビネーションが素晴らしい、「キングスマン」シリーズらしさを感じさせる戦闘シーンになっています。

他にも、従兄弟同士であるイギリスのジョージ5世、ドイツのヴィルヘルム2世、ロシアのニコライ2世をトム・ホランダーが一人で演じていたり、マシュー・ヴォーンらしい毒々しい遊び心もたっぷり。
本作も、目をふさぎたくなるような激しいバイオレンスシーンとついつい笑ってしまうような映像ギミックがつまったアクション大作と言えるでしょう。

劇中にはアドルフ・ヒトラーなんかも出てきたりするので、この初期キングスマンもシリーズ化されたりするのでしょうか。
20世紀に起こったさまざまな事件や人物にキングスマンがどう関係してきたのか。MI6とかと絡んだりもするのか。
ぜひ観てみたいところです。