【映画レビュー】桜姫

2013/4/25 日本映画さ行, 映画レビュー

『相棒シリーズ X DAY』、『探偵はBARにいる2』など、公開作が相次ぐ橋本一監督。
個人的には固い作品を手がける監督というイメージがあったのですが、とことん振り切った映画を作ってくれました。

江戸時代の遊郭を舞台にしたこの映画『桜姫』は、エロあり、グロあり、セックスあり、ゾンビありの娯楽作。
もう、「なんでもあり！」なスタッフ・俳優たちの心意気すら感じてしまうぶっ飛んだ作品です。

それにしても、主演の日南響子と青木崇高はとことんキレイでカッコよく、その他の役者はとことんヨゴレだったりギャグだったり脱ぎ担当だったり…。
なんだか、芸能界とかスターダストのヒエラルキーを感じさせられる作品でもありました。。。

＜STORY＞
時は江戸。名門・吉田家には桜の化身と謳われる、桜姫という美しい姫がいた。ある夜、桜姫は屋敷に押し入った権助という盗人に襲われる。肩に釣り鐘の入れ墨を入れた権助に身も心も奪われてしまった桜姫は家を出奔、権助をまねた入れ墨を入れ、“風鈴お姫”と名乗り小塚原の遊郭・ぢごくやで働きながら権助を探し始める。さっそく一番人気となったお姫の噂を聞きつけ、死に損ないの坊主・清玄や、お姫の探す権助がぢこくやに現れる…。

＜解説＞
鶴屋南北の「桜姫東文章」を下敷きに桜姫の狂い咲きを映画化したこの作品。
桜姫の清らかな魅力と、遊郭の毒々しい世界、小塚原のおどろおどろしい世界が不思議に調和した、奇妙な傾き者たちの物語です。

権助に犯されるまで生娘だった桜姫が、ものすごい床上手だったり、死んだ人が雷で生き返ったり、なんだかいろいろ突拍子もない設定が山盛りなのですが、ものすごくテンションが高いので、その世界観もなぜか納得させられてしまいます。

とにかく、桜姫だけは（遊女だけど）ピュアで美しく、権助だけは（盗人だけど）クールでカッコいい。
その他の皆さんは、とにかく一目見ただけでイロモノ、ヨゴレだとわかります。
奇妙な世界で綺羅星のように輝く二人の周りを、イロモノたちがぐるぐると回っているのです。

そのイロモノの最たる者が、でんでん演じる坊主・清玄と、麻美ゆま演じる遊女・お七でしょう。
いやね、この二人の体を張った演技は、もうその目で確かめて欲しいとしか、いいようがないですね。。。

こんな奇妙な作品ですが、作品の中で一部、ちょっと異質なシーンがあります。
それは遊郭・ぢごくやの中で、桜姫と平間美貴演じる遊女が二人でお風呂に入るシーン。
推察するに、基本的にクライアントの要望を聞いて珍妙な世界を真摯に作り上げた橋本一監督は、きっとこのシーンだけに自分の言いたいことや気持ちを盛り込んだのでしょう。
このシーンがあるが故に、この作品はいわゆる“にっかつロマンポルノ”のような、娯楽性とエロティシズムに加え、作家性を感じさせるような作品になっているのだと思います。

さて、この作品、多分日本公開だけでなく、世界への配信を見込んで作られた作品だと思います。
エキゾチック・ジャパンな美術と英語表記が並ぶエンドロールからもそんな作り手の狙いが伝わってきます。

それにしても、この作品を観た海外の人たちは、江戸時代の日本をどんなところだと思うのでしょうかね。。。
まあ、ファンタスティック映画祭などでは、受けそうな気がしますね。。。

『桜姫』（95分／日本／2013年）
英題：Princess Sakura
公開：2013年6月29日
配給：S・D・P
劇場：ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて
原案：鶴屋南北
監督：橋本一
出演：日南響子／青木崇高／麻美ゆま／でんでん／星野あかり／野々村真／平山祐介／風祭ゆき／合田雅吏／平間美貴／マリエム・マサリ／七海なな／HIRO／クロ／徳井優
公式HP：http://sakurahime-movie.com/