やさしい嘘と贈り物 / LOVELY,STILL
年老いてひとりで暮らす老人のラブストーリー『やさしい嘘と贈り物』。
クリスマスの電飾に彩られたおもちゃのような可愛らしい家や、素敵なそりデートの風景など、その恋の模様はとてもファンタジックです。
「年をとったらチャーミーグリーンのCMみたいな夫婦になりたいね」(古っ!)と言いあっているような夫婦の方に、ふたり揃って観て欲しい映画です。
<STORY>
老人・ロバートは小さな家でひとりで暮らしている。ある日、勤務先のスーパーから帰って来ると、家の玄関が空きっぱなしになっていた。自分で閉め忘れたのだ。家の中にはメアリーと名乗る美しい老婦人がいた。「開いていたから、心配になったの」と言う。最初は警戒したロバートだったが、メアリーに食事に誘われ、躊躇なく承諾。次の日は、そのデートのことを思うと仕事も手に付かない有様。ワクワクしながらデートに向かう…。
<Cheeseの解説>
「ネタバレ」と評判の予告編や公式サイトのストーリー紹介。
確かにね…、観ていて「ああ、予告観てなきゃ良かったなぁ」という気がしました。
でも、配給会社や宣伝会社の立場になって考えてみると、“老人同士のファンタジックなラブストーリー”とするより、“病気をも乗り越える、夫婦愛を描いた感動物語”にする方が、宣伝しやすいのは一目瞭然。
“老人同士の愛”だと、なんだか生々しかったり湿っぽかったりしそうですもんね。
そうやって、「なんか面白くなさそう」って若い人たちに敬遠されるより、「なんか感動しそう!」と、少しでも多くの人に観てもらえる方がいいだろうという、経営判断なのでしょう。
結果的にその思惑は成功し、多くの人に観てもらえたからこそ、ちょっとしたバッシングも巻き起こっているということなのではないでしょうか。
Cheeseとしては、「真相を知らずに観たかった気もするけど、まあ、結果的にいい映画を観ることが出来たから、まあいいか」という感じ。
宣伝方法によっては、映画を観に行くこともなかったかもしれないですからね。
現実に、認知症老人の世話は簡単ではないでしょうし、あんなに美しくはいかないでしょう。
クリスマスのデコレーションに彩られたおもちゃのような家々は、辛い現実を忘れようとしているロバートが今生きている、夢のような世界を表しているのかもしれません。
現実が辛いからこそ、夢の中の風景は美しいのでしょう。
そんな、辛い現実を夢のような映像で描いたこの作品は、「夫婦っていいなぁ」「ふたりで年を重ねて行くのっていいなぁ」と、素直に思わせてくれます。
こんな感動作を、弱冠24歳にして(しかも、自分より半世紀以上も長く生きている名優たちを使って!)作り上げたニコラス・ファクラー監督、これからも注目していきたいと思います。
『やさしい嘘と贈り物』(92分/アメリカ/2009年)
原題:LOVELY,STILL
公開:2010年3月27日
配給:ピックス
劇場:シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
監督・脚本:ニコラス・ファクラー
出演:マーティン・ランドー/エレン・バースティン/エリザベス・バンクス/アダム・スコット
公式HP:http://avex-pix.co.jp/okurimono/
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