チャップリンからの贈りもの／ La Rançon de la gloire

2015/7/16 外国映画た行, 映画レビュー

1977年のクリスマスに亡くなった喜劇王チャーリー・チャップリン。
スイス・レマン湖湖畔の村にあるヴヴェイの墓地から、彼の遺体が盗まれるという事件がありました。

この映画『チャップリンからの贈りもの』は、その事件をユーモラスに描いた喜劇です。
しかも、チャップリンが実際に暮らしていた家や、本物の墓地、彼の孫娘のドロレス・チャップリンや息子のユージーン・チャップリンまで出演しています。

移民であるがゆえに貧乏で、でも愛だけはしっかり持っている…。
そんな無垢な弱者への愛に満ちた悲喜劇を作り続けてきた喜劇王チャップリンからの“贈りもの”というにふさわしい、愛に満ちた一作です。

＜STORY＞
1977年、刑務所から出所してきたエディは、スイスはレマン湖畔の町、ヴヴェイに暮らす友人・オスマンの家に世話になる。エディ同様に移民であるオスマンは、妻が入院中のため娘のサミラと二人で暮らしていた。クリスマスの日、喜劇王チャーリー・チャップリンが亡くなった。エディは、ヴヴェイの墓地に埋葬されたチャップリンの遺体の誘拐を思いつく。妻の入院費を払えないオスマンとエディは、チャップリンの墓から遺体を盗み出す…。

＜解説＞
イギリスで生まれ、アメリカで活躍したチャーリー・チャップリン。
1952年にアメリカから国外追放処分にされ、1953年からスイスのヴヴェイで暮らし始め、1977年、ヴヴェイで人生を終えました。
弱者への愛に満ちた映画を製作したチャップリン。
その活躍は、俳優、映画監督、コメディアン、脚本家、映画プロデューサー、作曲家など多岐にわたります。

本作『チャップリンからの贈りもの』の主人公は、エディというケチな犯罪者。
でも、決して根っからの悪人ではありません。
刑務所から出て、あてもなく、友人のオスマンの家に転がり込んでいる身です。
お金に困っているオスマンの様子を見て、「そうだ、俺たちの友だち（チャップリン）から金を借りればいい！」と、遺体の誘拐を思いつきます。

このオスマンも、妻と幼い娘と真面目に暮らしていたものの、妻が病気をし、手術に大金が必要となりました。
最初はエディの提案を断っていましたが、このままでは妻の治療ができないため、やむなく遺体誘拐に賛同するのです。

エディもオスマンも、言ってみればまさにチャップリンの映画に出てきそうな人たち。
だからこそエディは「チャップリンは俺たちの友だちだ」と言い出したのです。

彼らの犯罪計画は、ずさんもいいところ。
見ていておかしくなるくらい穴だらけで、もしこれが現代の話だったら、この二人は24時間もしないうちにスピード逮捕されていたことでしょう。

しかし、エディとオスマンは大真面目です。
身代金を得ようと、必死にない頭を絞り、身代金要求の電話をかけ、チャップリンの未亡人のウーナ・オニールや弁護士と交渉しようとするのです。
その彼らの必死さが滑稽で、観客は思わず笑ってしまいます。

貧しさゆえの悲哀を抱きつつ、その必死さが笑いを誘う…。
これも、まさにチャップリン映画の主人公そのものと言えます。
そして、その主人公たちを優しい目で見つめ、愛を感じられる結末を迎えている点からも、まさにこの作品は“チャップリンからの贈りもの”そのものと言えるでしょう。

ミシェル・ルグランの音楽が物語を彩るこの作品、チャップリン作品へのオマージュもたっぷりです。
『サーカス』のように主人公のエディが道化の才能を発揮してサーカスに入団したり、サーカスの楽屋や舞台の登場シーンは『ライムライト』そのものだったり。
チャップリンファンの方にとっては、まだまだ胸が熱くなるシーンがたっぷりあるはずです。

『チャップリンからの贈りもの』（115分／フランス／2014年）
原題：La Rançon de la gloire
英題：The Prince Of Fame
公開：2015年07月18日
配給：ギャガ
劇場：YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開
監督：グザヴィエ・ボーヴォワ
撮影：カロリーヌ・シャンプティエ
音楽：ミシェル・ルグラン
編集：マリー＝ジュリー・マイユ
出演：ブノワ・ポールヴールド／ロシュディ・ゼム／キアラ・マストロヤンニ／ピーター・コヨーテ／ドロレス・チャップリン／ユージーン・チャップリン／セリ・グマッシュ／ナディーン・ラバキー／グザヴィエ・マリー／アーサー・ボーヴォワ／アデル・バンシリエフ／オリヴィエ・ラブルダン／マリリン・カント／フィリップ・ロダンバッシュ／ルイ＝ド・ランクザン／ヴァンサン・オーベール
Official Website：http://chaplin.gaga.ne.jp/