【映画レビュー】すべてが変わった日／ Let Him Go

2021/6/12 外国映画さ行, 映画レビュー

『マン・オブ・スティール』などでも夫婦役を演じているベテラン名優・ケビン・コスナーとダイアン・レインが夫婦を演じている映画『すべてが変わった日』。

愛する息子を亡くし、孫を取り戻そうとするジョージとマーガレットという老夫婦の戦いを描いています。
彼らに対するのは、レスリー・マンヴィル演じる、一族を支配する強い母・ブランチ。

約50年前、1963年という時代を舞台に描かれた本作、一族のつながりが何よりも大切であるというその時代の価値観がよくわかります。
なんといっても、あの広大なアメリカの大地にあっては、外から来る敵と戦うためにも一家の団結は必要不可欠のものだったのでしょう。

アメリカ映画では強い母親の影響で子どもが起こした犯罪がよく描かれていますね。
以前は日本ではあまりこのタイプの母親の物語はありませんでしたが、最近は報道などでこういった女性の物語をよく目にするようになりました。

子どものためを思うのではなく、自分の満足や影響力を確認するために子どもを利用する母親。。。
母の愛というのは、本当にさまざまな形があるものです。

STORY

1963年、モンタナ州。ジョージとマーガレット夫婦は、息子夫婦と孫のジミーの5人で幸せな生活を送っていた。ある日、落馬事故で息子が死亡。3年後に義理の娘・ローナは再婚し、ジミーを連れて出て行ってしまう。マーガレットは近所でローナとジミーが再婚相手から叩かれている姿を目撃、心配して彼らの家を訪ねたところ、彼らは引っ越していた。マーガレットはジミーを連れ戻すことを決意し、ジョージと共に彼らの行方を探す旅に出る。

解説

本作の主人公はモンタナ州の牧場で暮らす元保安官のジョージとマーガレットのブラックリッジ夫妻。
マーガレットは息子と孫のジミーを溺愛しており、息子の妻のローナとは少し距離がありました。

そんなある日、息子が落馬事故で死亡してしまいます。
その後、ローナとジミーは3年ほどブラックリッジ家で同居していましたが、ローナはドニー・ウィーボーイという男と再婚し、家を出ます。
そして、マーガレットたちに報告もないまま、街を出て行ってしまうのです。

ローナとジミーが再婚相手から叩かれている姿を偶然目撃したマーガレットは、ジミーを取り戻すことを決意し、ジョージと共に彼らを追って街を出ます。少ない手がかりをたどって、モンタナ州の自宅からノースダコタ州へと、ウィーボーイ家の実家へと何もない荒野を抜けて車を進めるのですが……。

ドニーが育ったウィーボーイは、絶対的な権力を持った母親のブランチが支配していました。
ドニーは一度ブランチの元から逃げ出したそうですが、結婚相手のローナとともに、実家に連れ戻されてしまいます。そしてその後は牙を抜かれたように、母親の言いなりになっていたのです。

そんなブランチに、マーガレットは戦いを挑みます。
ブランチとマーガレット、お互いに母親であり、ジミーの祖母でもある存在。
一緒に食卓を囲みながらも、彼女たちはそれぞれの流儀で自分の正当性をアピールし、激しい火花を散らすのです。

屈強な息子たちを支配し、ウィーボーイ家に君臨するブランチは、まさに毒親。
息子たちから考える能力を奪い去り、自分のルールで支配しています。
ブランチを演じるレスリー・マンヴィルの演技も素晴らしく、かなり見応えあり。けっして大きな声で怒鳴りつけたりするわけではないのですが、人を支配しようとする意思のこもった声の表現には、舌を巻きました。

対するマーガレットも、ある意味、毒親でした。
息子を愛し、孫を溺愛し、それゆえに息子を奪ったローナをどこか嫌い、孫を産んでくれたローナを軽んじていたのです。
しかし、息子を亡くし、ローナが孫を連れて家を出て行ったことで、少し変わっていくのです。

最初は“ジミーのため”という名目ながら、実は自分のためにジミーを取り戻そうとしていたマーガレットでしたが、ブランチとの対決を経て、本当にローナとジミーのためを思うようになります。

道中で出会ったネイティブアメリカンの血を引く孤高の青年・ピーターとの出会いも、マーガレットを変えたきっかけの一つでした。
彼との出会いで、彼女は新たな価値観に気づき、自分以外の価値観を受け入れられるようになっていくのです。

しかし、それに気づくのには、あまりにも大きな代償が必要だったのですが……。
げに恐ろしきは母の愛。いや、女の執念、なのかもしれません。。。

作品情報

『すべてが変わった日』（114分／アメリカ／2020年）
原題：Let Him Go
公開：2021年8月6日
配給：パルコ　ユニバーサル映画
劇場：TOHOシネマズシャンテほか全国にて
原作：ラリー・ワトソン
製作・監督・脚本：トーマス・ベズーチャ
音楽：マイケル・ジアッチーノ
製作総指揮・出演：ケビン・コスナー
出演：ダイアン・レイン／ケイリー・カーター／レスリー・マンヴィル／ウィル・ブリテン／ジェフリー・ドノヴァン／ブーブー・スチュワート／ライアン・ブルース
Official Website：http://subetegakawattahi.com/

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Let Him Go [DVD]

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Diane Lane(出演), Kevin Costner(出演), Kayli Carter(出演), Ryan Bruce(出演), Lesley Manville(出演), Will Brittain(出演), Jeffrey Donovan(出演), Connor Mackay(出演), Adam Stafford(出演), BooBoo Stewart(出演), Thomas Bezucha(監督)
Universal Studios (2021-02-02T00:00:01Z)