【映画レビュー】世界にひとつのプレイブック ／ Silver Linings Playbook

浮気し（てとっくに離婚し、さらには接近禁止命令まで出され）た妻を取り戻そうと、ちょっと病的な執念を見せる男性、パット。
彼は妻を取り戻すためにダイエットしてスリムになった今も、汗をかいてさらに痩せるために毎日ゴミ袋を被ってランニングに精を出すような、ちょっともう妻に執着し過ぎて、いろいろ何がよくて何が悪いのだかわからなくなっているような男性です。

そんなパットが出会ったのは、友人の妻の妹のティファニー。
彼女は夫を亡くしたショックで職場の全員と寝てしまい、会社をクビになってしまった女性。
今も、他人との距離の取り方がわからず、いろいろと空回りしているような女性です。

そんな二人が、「Excelsior(より高く)!」を合い言葉に、ティファニーの夢であるダンスコンテストに出場することになります。

最初はいやいや出場するだけだったパットですが、全財産を失ってしまった彼の父親の財産を取り戻すため、このダンスコンテストである点数を取らなければならなくなるのです。

そして、必死で練習を繰り返すうち、パットとティファニーはだんだんお互いの理解を深めていきます。
そして、これまでうまくいかなかった父親が自分のことを大事に思っていたことを、やっとパットも理解し、許し合うことができるようになるのです。

病気というのは、その家庭の中の弱いところに発症してしまうもの。
機能不全を起こしていた家庭で、一番弱かったパットのところに症状が出てしまっていたものの、ダンスコンテストによりこの家族は機能不全を克復し、ひとつの“強い家族”に成長していくのです。
そして、強くなったパットは、本当に愛する女性を手に入れる…。

『ザ・ファイター』にて第83回アカデミー賞主演男優賞、助演女優賞をクリスチャン・ベールとメリッサ・レオにもたらしたデヴィッド・O・ラッセルだけあって、俳優たちの真情あふれる演技を引き出すのはお手のもの。
テンポも良く、さりげないユーモアもたっぷりで、観ている内にどうしようもないダメ男、ダメ女、ダメ親たちを好きになってしまうことでしょう。

本作は主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞の全演技部門がノミネートされるという、31年ぶりの快挙を果たしています。
ノミネート＝受賞というわけではないですが、彼ら全員が素敵な演技を見せてくれていることは間違いありません。
そう言えばいつもコワモテ気味なロバート・デ・ニーロのダメ親父っぷりも、なかなかの見もの。
ダメ親父にダメ男、ダメ女にダメ母親、彼らの演技にぜひ魅了されてきてください。