【映画レビュー】ブラック・ウィドウ / Black Widow
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の直後、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』までの間にアベンジャーズのメンバーと別れ単独行動をしている間の“ブラック・ウィドウ”ことナターシャ・ロマノフの姿を追う映画『ブラック・ウィドウ』。
知られざるナターシャ・ロマノフの幼少期、家族との関係などが描かれています。
彼女の両親はどんな人だったのか?
そして次期“ブラック・ウィドウ”と目されるナターシャの妹ことエレーナ・ベロワとはどんな人物なのか?
スカーレット・ヨハンソン演じるクールで寡黙なナターシャとフローレンス・ピュー演じるエレーナの口の減らない率直な雰囲気が好対照を見せており、作品にユーモアと笑いをもたらしています。
STORY
ソコヴィア協定に違反し追われることになったブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフは、タスクマスターという謎の暗殺者に襲われる。ブダペストの隠れ家に向かった彼女は、そこでかつて妹として育てられたエレーナに出会う。エレーナはナターシャが抜け出した組織“レッドルーム”でウィドウと呼ばれる暗殺者として活動していた。しかしあることをきっかけにレッドルームの洗脳が解け、ナターシャに助けを求めてきたのだ。
解説
「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズの第24作目となる本作。
『15歳のダイアリー』、『さよなら、アドルフ』、『ベルリン・シンドローム』を手がけたケイト・ショートランド監督が手がけた本作。
この映画『ブラック・ウィドウ』は、ナターシャ・ロマノフの贖罪と開放の物語です。
かつて“レッドルーム”という組織でスパイ、暗殺者である“ウィドウ”となるべく育てられたナターシャ。
女性から意志を奪いその行動を強制する男の元から身一つで逃げ出してシールドに入り新しい居場所を得ました。
シールドの任務で“レッドルーム”を壊滅させた彼女ではありますが、一つの苦い心残りがありました。
それは、幼い頃は任務の一環でアメリカのオハイオ州で姉妹として育てられたエレーナの存在。
「エレーナはどこかへ逃げのびてなんとかやっているだろう」と自分を誤魔化していたのです。
しかし、レッドルームの支配者・ドレイコフは巧妙に逃げのび、再び勢いを務めていました。
レッドルームの主な戦力は、“ウィドウ”と呼ばれる20〜30代の若い女性暗殺者たち。彼女たちは脳波を操られて自身の感情を失い、ドレイコフの命じるままに暗殺者として過酷な任務に身を投じていたのです。
かつての妹・エレーナも、この“ウィドウ”となっていました。
しかし、あるきっかけで自分の意思を取り戻し、ナターシャの元に助けを求めてきたのです。
ナターシャはエレーナと共に、他のウィドウたちを救うために立ち上がります。
そのために、彼女は幼い頃、任務の一環で、アメリカ・オハイオに共に潜入し家族として暮らしていた“レッド・ガーディアン”ことアレクセイ・ショスタコフとメリーナ・ヴォストコフを訪ねます。
ナターシャとエレーナにとっては、この二人と家族として暮らしていた時が、唯一の“幸せな子ども時代”でした。
大人になったナターシャは、彼らと再び向き合い、関係を再構築していきます。擬似家族は、ふたたび家族となったのです。
こうしてナターシャは過去と向き合い、妹やウィドウたちを残して自分一人で逃げのびた罪を贖います。
そして自らが捨ててきた家族との関係を再構築し、かつて彼女を支配していた男に鉄槌をくだし、かつての自分のような多くの女性たち“ウィドウズ”を解放します。
そして、これからは自分の選択で生きていけるように、好きな服を自分で選べるように、彼女たちの道を開くのです。
自らの行いは、新たな行動によって贖うことができる。そして人生は再構築することができる。
わだかまりを抱えた家族であっても、きちんと向きえば新たな関係性を作り上げることができる……。
そう気づいたナターシャは、もう一つの家族「アベンジャーズ」を再構築することを決意します。
そうして、物語は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にへと続いていくのです。。。
本作でケイト・ショートランド監督が描いたナターシャの物語は、まさに現代の女性の物語でもあります。
これまで女性を蹂躙し、モノとして扱ってきた男性たちの支配下から抜け出して立ち上がった、意志と力を持った女性たち。そして、立ち上がった女性が、まだ男性の支配下にある他の女性たちを救っていくのです。
この映画は、まさに現在の映画界の動きとも呼応したもの。
“Me Too運動”以来、ハリウッドでも女性陣が次々に立ち上がっています。
シャーリーズ・セロンやマーゴット・ロビー、ニコール・キッドマンといった、かつてはセクシーアイコンでもあった実力派女優たちがプロデューサーとしても立ち上がり、女性たちをエンパワーメントしていく映画を次々に作って手腕を発揮していたり。
女性監督や女性スタッフによって女性をヒーローとして描く「ワンダーウーマン」シリーズのような映画が作られ、大ヒットしたり。
映画は男性のものではなく、女性はけっして添え物ではない。描かれるべき価値と意志を持った存在なのだと、彼女たちはその作品で高らかに訴えています。
「マーベル・シネマティック・ユニバース」においても、“ブラック・ウィドウ”はかつてはアイアンマンやキャプテン・アメリカら男性ヒーローに華を添える存在と描かれていたこともあります。
しかしスカーレット・ヨハンソンがプロデューサーに名を連ねた今作では、彼女は個人の歴史を抱えた一人の人間、一人のヒーローとして、名もなき“ウィドウ”を救い出し、自分の意志で新たな道を選びます。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』で“家族”のために犠牲的な決断をしたナターシャの、人間的な側面、ヒーローとしての心情が、本作ではきっちりと描かれていました。
ナターシャ・ロマノフは、一人のヒーロー“ブラック・ウィドウ”なのです。
映画は時代を象徴するもの。
こんなふうに、女性の描かれ方が変わっていく時代に立ち会えたのは、とても素晴らしいことだと思います。
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アベンジャーズ / The Avengers:http://c-movie.jp/review/the-avengers/
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作品情報
『ブラック・ウィドウ』(140分/アメリカ/2020年)
原題:Black Widow
公開:2021年7月8日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
劇場:全国にて
監督:ケイト・ショートランド
脚本:エリック・ピアソン
ストーリー:ジャック・シェイファー/ネッド・ベンソン
製作:ケヴィン・ファイギ
音楽:ローン・バルフ
製作総指揮・出演:スカーレット・ヨハンソン
出演:レイチェル・ワイズ/フローレンス・ピュー/デヴィッド・ハーバー/O・T・ファグベンル/オルガ・キュリレンコ/エヴァー・アンダーソン/ウィリアム・ハート/レイ・ウィンストン/オリヴィエ・リヒタース
Official Website:https://marvel.disney.co.jp/movie/blackwidow.html
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