【本】痛いほどきみが好きなのに / イーサン・ホーク
イーサン・ホークの処女小説「痛いほどきみが好きなのに」を読みました。
この小説はイーサン・ホークの自伝的小説とも言われていて、彼自身が監督して映画化もされました。
小説、及び映画の原題は「The Hottest State」。
イーサンの出身地であり幼少の頃を過ごした「States(州)」、“テキサス州の別名”と、もっともホットな「States(状態)」、“恋に落ちた状態”のダブルミーニングのようです。
<STORY>
テキサス出身の20歳のウィリアムは、ニューヨークで駆け出しの役者をしていた。ある日ウィリアムは、バーで歌手志望のサラという娘と出会う。ふたりはその日に恋に落ちた。その日からふたりは長い時間を一緒にすごすが、サラはウィリアムにセックスを許さない。ウィリアムが役者の仕事でパリにしばらく行くことになり、撮影前の一週間、ふたりはパリで楽しい日々を過ごす。しかし、その一週間がサラと過ごした最後の日々になる…。
<感想>
いわゆる「Boy meets Girl」な物語。
ですが、さすがイーサン・ホークの小説だけあって、一筋縄ではいかない感じです。
それは、恋に落ちるのが、役者志望の男とミュージシャン志望の女という、必要以上に自意識過剰なふたりだから。
ウィリアムは幼少時に両親が離婚して、17歳しか年のはなれていない母親に育てられた男性。
父親とは7年間あっておらず、正しい“大人の男”として、どのように振舞ったらいいのかがわかりません。
ハンサムで口が達者なので、実の母親からも「中身がない男」と言われてしまう。
だからこそ、俳優として「人の人生を演じる」ことが得意なのです。
サラはサラで、過去の恋愛に傷つき、抑圧的な母親の支配から逃れ、自分らしく生きたいと思って生きている女性。
ミュージシャン志望なのに、人前で歌うことが怖くてしょうがない。
新しい恋に踏み出したいという思いもあり、初めて会ったウィリアムと何度も何度も情熱的なキスを交わしたりもするけれど、傷つくのが怖くて、セックスまでは踏み込めない。
そんなふたりだからこそ、気の合う時はとても楽しく夢のように過ごせるけれど、ふと我に帰ると相手への気持ちがよくわからなくなる。。。
「あなたといると私が私らしくいられないの」とサラは言います。
自分らしく生き直すためにニューヨークに出てきたのに、ウィリアムの“素敵なガールフレンド”を演じてしまう自分を拒否し、ウィリアムに恋する気持ちを否定し、彼から離れて行くのです。
うーん、恋とはかくもめんどくさいものなのか。。。
まあ、自意識過剰な人間っていうのは、やたらと自分のことばっかり頭の中でぐるぐる考えて、自分の本当の望みとは違う結論を出しちゃったりしがちなのも、わからないではありません。
かく言う私も、ちょっとその傾向ありだったり。。。
自分の要望やスタイルを(知らず知らずの内に)サラに押し付けていたウィリアムも、この恋愛を経て大人になるのでしょう。
そしてやっと、“自分を捨てて7年間会いに来なかった”父親と、母親の上京(っていうの?上ニューヨーク?)に従って離れざるを得なかった(父母の逸話や思い出に満ちた)大好きな地“The Hottest State”テキサスからの呪縛からも解き放たれるのかもしれません。
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『痛いほどきみが好きなのに』イーサン・ホーク インタビュー
http://eiganavi.csgyao.com/news/2008/04/post-89d3.html
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