【本】MORSE―モールス / ヨン・アイヴィデ リンドクヴィスト

MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作小説である「MORSE(モールス)」を読みました。

いじめられっ子の少年・オスカルと、オスカルのアパートの隣の部屋に引っ越してきたヴァンパイア、エリの物語です。

これはスウェーデンの小説家ヨン・アイヴィデ リンドクヴィストの作品なのですが、なんとこれがデビュー作だそう。
デビュー作にして自国で映画化、なおかつその映画がハリウッド・リメイク(エリを演じるのは、『キック・アス』でヒット・ガールを演じた、クロエ・グレース・モレッツちゃん!)されるだなんて、なんたる才能。おそろしや。。。

私は映画を観た後でこの作品を読んだので、どうしても映画のキャラクターが脳内再生されてしまったのですが、なかなか面白かったです。
ストーリーは割とそのままなのですが、映画の中ではいまひとつよくわからなかった点などが「なるほど、そういうことだったか!」と、いろいろ合点がいきました。

<STORY>
学校でいじめられている、母親と二人暮らしの孤独な少年・オスカー。ある日彼は、隣室に引っ越してきたという不思議な少女・エリと出会う。その頃、オスカーの住む街で猟奇殺人事件が発生。犯人は被害者を木からさかさまにぶらさげ、殺した後に血を抜こうとしていたのだ。やがて犯人は捕まるが、硫酸で顔を潰してしまい、犯人の身元はわからないままだった。オスカーはエリと仲良くなり恋に落ちるが、やがて彼女の秘密を知る…。

<感想>
どうしても、映画を先に観てしまった分、純粋な本の感想というより、映画と比較しての感想になってしまうのですが…。

本書では、映画でははっきりと明かされていなかったいくつかの点が、はっきりと明かされていました。

例えば、エリがヴァンパイアになった理由。
例えば、エリとエリを養っていた男・ホーカンとの出会い。
例えば、オスカルの母親が父親と離婚した理由。

映画では観客の想像に委ねられていたこれらのことがはっきりと説明されます。

でも、本書を読んで一番納得できたのは、オスカルの心の動きです。

へんな匂いのするちょっと不思議な女の子・エリと出会い、だんだん惹かれていき、恋をするオスカル。
ここまでは、思春期の人間なら誰もが通る道です。

しかしそこでオスカルはエリがヴァンパイアだということを知ります。
恋する気持ちが恐れに変わり、恐れが受容に変わり、受容が愛に変わっていくのです。

このあたりのオスカルの心情描写が、なかなかに良いのです。
少年らしい意地悪さや不安定さを持っていたオスカルが、だんだんと成長していく様がうかがえます。

最後、エリはオスカルの庇護者となり、オスカルのエリの庇護者となるのですが、ラストの終わり方もきっぱりしていて良かったなぁ。

映画を観た時も思いましたが、この結末がハッピーエンドなのか、新たなる悲劇の始まりなのかはわかりません。
でも、目撃者たちが口々にエリのことを「天使に見えた」と証言しているということからも、天使に魅入られた少年の物語は、ひとまずはハッピーエンドと言えるのではないかと思います。
少なくとも、新たな悲劇が始まるには十数年後になるはず…。

それにしても、スウェーデンの人の名前というのは、個人的に馴染みがないので、いまひとつ「誰が誰だっけ?」とわからなくなりがちだったのがちょっと残念。
ラッケとヨッケとか、インミとヨンミとトンミとか、似てますよね…。

【関連作レビュー】
■映画『ぼくのエリ 200歳の少女』http://c-movie.jp/review/let-the-light-one-in/

■映画『モールス』http://c-movie.jp/review/let-me-in/

 
 

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