【本】ジオラマ / 桐野夏生

ジオラマ (新潮文庫)

最近まで、あまり現代小説を読むことのなかった私ですが、「この人の作品なら、無条件に読みたい」と思う作家さんが数人います。
その中のひとりが、桐野夏生

彼女の冷徹な筆致は、普段は表に出さずに隠している、でも確かに心の内側に潜んでいるドロドロとした感情や歪んだ思いに焦点をあて、それを日の光の下に晒し出します。

自分の中にたまった澱を見せつけられているようで、見たくないんだけれどもついつい読みたくなってしまう…。

私にとって、桐野夏生さんはそんな作家です。
そんな桐野夏生の短編小説集「ジオラマ」を読みました。

<STORY>
地方銀行に勤める溝口は、4LDKの高級マンションを購入し、家族4人で幸せな生活を送っていた。だがある日、階下に住む赤い髪をした独身女性・千絵から生活音がうるさいとの苦情が入る。溝口は憤るが、それを千絵に伝えることはできなかった。そんな中、溝口の勤める銀行が倒産。失意の溝口は、いつのまにか千絵の家を訪れ、男女の関係に。その日から、階上の我が家の生活音を聞きながら、千絵の家で情事に耽る生活が始まる…。(表題作:「ジオラマ」。その他9編を収録)

<感想>
自分の妻のスリッパの足音を聞きながら、愛人とのセックスを楽しむ男。
昼間は普通に会社勤めをしながら、夜は売春婦となるOL。
ゲイであることを隠して偽装結婚し、夜な夜なボート部員の大学生と、電話で会話を楽しむ男。
留守番する女。

この短編小説集に登場するのは、どこにでもいそうな普通の男女。
平凡な生活を送りながら、どことなく満たされない思いを感じている人々です。

彼らの行動や言動は、いつしか常軌を逸して行きます。
でも、彼らはどこにいてもおかしくない。
私であっても、私の両親であっても、私の友人であってもおかしくないのです。

一見ふつうに見える人々が心の奥底に抱えている抱えるグロテスクな闇を、一気に白昼にさらしているこの短編小説集。
本来グロテスクなものなのに、あまりにも鮮やかにキレイに写し取っているので、一見グロテスクに見えない、という。
でも、よーく目を凝らして見ると、その全体像のグロテスクさにぞっとしてしまう、そんな感じです。

短編であるからこそ、その鮮やかな手際はいっそう引き立っています。

恐ろしいと思いながらも、ついつい止められずに読み進んでしまう、桐野夏生の小説。
「まだはがしちゃダメ!」と思いながらも、ついついカサブタをはがして、生っぽい傷跡を露呈させてしまうように、怖いもの見たさで読んでしまいます。。。

「柔らかな頬」を初めて読んだ時は、本当に衝撃を受けました。

桐野夏生
公式HP:http://www.kirino-natsuo.com/

ジオラマ (新潮文庫)
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