【本】臨場 / 横山秀夫

臨場 (光文社文庫)

「クライマーズ・ハイ」「半落ち」など、数々の映画の原作となっている小説を書かれている横山秀夫の短編小説集「臨場」を読みました。

“終身検視官”と恐れられる凄腕の検視官・倉石を中心に、様々な変死事件の背後にある人間ドラマが描かれています。

この小説集、2010年4月から、内野聖陽主演でドラマ化されていました。
何度か見たのですが、倉石が破天荒で、でも自分の仁義をつらぬく渋いキャラで、なかなかカッコ良かったんですよねー。
また2010年4月からもパート2が放送されるということなので、ちょっと楽しみにしています。

<STORY>
L県県警にて、その正確な検視の腕を買われ“終身検視官”と呼ばれている男・倉石。彼には信望者も多いものの、その破天荒な行動から、上層部からは苦々しく思われていた。彼の下で検視担当調査官心得として働く警部の一ノ瀬は、かつて不倫関係にあった女性が首つり死体で発見されたことを知る。一ノ瀬は警視庁への栄転が内定していたが、その女性の死を悼むより、自分が容疑者になることを恐れながら検視の場へ向かう…。

<感想>
“検視官”というあまりなじみのない職業にスポットを当てたこの小説。
検視官と言うのは、死亡事件の現場に行き、その死体の模様を観察、自殺なのか他殺なのかを見たてると言う、初動捜査の要となる検視をする警察官の役職です。
“自殺”と判断したのにそれが他殺だった場合は殺人犯を見逃すはめになるし、“他殺”と判断したのに自殺だった場合、刑事たちの貴重な人材リソースを無駄に使うはめになります。

この小説の主人公の倉石は、その責任重大な検視官ポストに丸七年君臨し、その間一度も事件の“見たて”を間違えたことがないという人物です。

素人目には“刑事”“鑑識”“検視官”“CSI”と、どう違うのかよくわかりませんが、それぞれにいろいろな職務があるのですね。
そして、素人はついつい“刑事”“鑑識”“検視官”“CSI”など、みんな機械的に仕事をこなしていると思ってしまいがちですが、それぞれにいろんな思いを持ちながら仕事をしているのだということを、本書を読んで実感できました。
人の生死に関係する、生々しい職場であるからこそ、警察組織、捜査現場にはいろいろな思いが渦巻くのですね…。

横山秀夫さんは、地方新聞の記者として長年勤務され、その後作家になられた方。
記者として夜回りや記者クラブなどを体験されてきたからこそ、警察官たちの人物描写がこれだけリアリティを持っているのでしょう。
県警上層部の行方不明事件を描いた「震度0」も、警察内部の水面下での権力闘争が描かれていて、地味だけど面白かったことを思い出します。

ドラマでは、L県警を東京警視庁に、52歳の倉石を46歳に、と若干の設定を変更してあります。
原作の倉石は“槍のように痩せている”のですが、内野聖陽さんはがっしりとした体躯で、かなりイメージは違います。
でも、それはそれでしっくり来ていて、十分に魅力的なキャラクターになっていました。
4月7日から放送されるドラマの第2シリーズも、ちょっと楽しみです。

ドラマ「臨場」
公式HP:http://www.tv-asahi.co.jp/rinjo/

臨場 (光文社文庫)
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