【本】親鸞 / 五木寛之

親鸞 (上) (五木寛之「親鸞」)

五木寛之の小説「親鸞」を読みました。
自分の無知をあまりさらけ出すのもどうかと思うのですが、私にとっては五木寛之氏の著作を読むのも(たぶん)初めてで、親鸞について書かれた書物を読むのも初めて。
さらに言えば、親鸞の起こした浄土真宗についても、日本史で習ったくらいの知識しかありません。お恥ずかしい。

しかし、無知なだけに、親鸞の迷いや親鸞の師匠にあたる法然房源空の教えも、「なるほどー」と思いながら読み進めることができました。

<STORY>

親鸞 (下) (五木寛之「親鸞」)

貴族である日野家に生まれたが、親戚の家で育てられた少年・忠範。心を許せる家人・犬丸やその妻・サヨに可愛がられながらも、淋しい少年時代を送っていた。忠範は法螺房弁才、ツブテの弥七、河原坊浄観といった埒外の人々と交流し、自由な空気を感じながら育っていた。やがて、9歳になった忠範は比叡山に入り出家し、範宴(はんねん)と名乗る。そして法然房源空の教えと出会った範宴は比叡山を降り、法然上人門下の念仏聖となる。

<感想>
平安時代末期に生まれ、鎌倉時代に生きた1173年5月21日生まれの親鸞が、“親鸞”と名乗り始めるまでを描いたこの物語は上下巻の2冊になります。
上巻を読んでからだいぶ時間を置いて下巻を読んだため、多少印象が薄れている部分もあるのですが…。

上巻は、忠範少年が法螺房弁才、ツブテの弥七、河原坊浄観といった自由人と交流しながら、下々の生活を知り、枠にはまらない考え方を広げていく物語。
比叡山に入る前の後白河法皇の命を狙う六波羅王子(ろっぱらおうじ)との対決から、聖徳太子からの示現など、割と派手めにストーリーが展開していきます。

下巻は、法然上人の弟子となった範宴(親鸞)が、妻となる女性・恵信やその妹・鹿野と出会い、女性に心ひかれる自分の業の深さを感じながら、深く念仏門に帰依し、綽空(しゃくくう)、善信(ぜんしん)と名前を変えながら、仏教についての思惟を深めていく物語です。
安楽房遵西と法本房行空、そして黒面法師たちのたくらみなど、割とストーリー的に派手な要素もありますが、そこもわりと淡々と流れていきます。

ただ、親鸞の心の流れに寄り添い、彼が恵信との結婚を決意し、肉食妻帯をしながらも“聖”として信念を固めていくまでを描いているのです。

本書の中にいる親鸞は、迷い、苦しみながらも救いを求めている人物です。

聖人としてではなく、迷い悩む一人の人間として描かれているところが、読者に親しみを感じさせるゆえんなのでしょう。
私のような、仏教について何も知らない人間にも、興味を抱かせてくれました。
教科書で習った「悪人正機説」という言葉の意味が、やっと腑に落ちた気がします。

この物語「親鸞」の後日編は、「親鸞 激動編」として、現在も連載中です。
“親鸞”になった親鸞が、この後どのような悩みを抱え、どのような人生を送るのか…、楽しみに見守りたいと思います。

五木寛之「親鸞」
公式HP:http://shin-ran.jp/

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