【本】私の聖書 / 小川国夫
外国映画を観ていると、「これは聖書の何かのエピソードの暗喩なんだろうなぁ」と思うことがよくあります。
キリスト教の知識がないと、この映画にこめた監督の意図をきちんと理解することができないと思うことがしばしば。
日本人的無宗教な私ですが、一度キリスト教について、基本的なことを知りたいと、ずっと思っておりました。
でも、いきなり聖書を読むのは敷居が高い気がしたので、作家の小川国夫先生の「私の聖書」という本を読んでみました。
実は、小川国夫先生は、私が大学時代に母校の教授をしておられました。
私も二回生の頃、「創作演習」とか「創作概論」とかの(名前をはっきり覚えてない…)、授業を受けていたものです。
先生は静岡に住んでいらして、大阪にあるその大学まで1週おきに通っていらしたので、授業は1週おきに、2コマ続けて行われていました。
その2コマの間中、何をしているのかというと、とりとめのないおしゃべり。
先生は若い頃、バイクに乗ってフランスを一人旅してまわったりしていたそうで、その頃の思い出や恋の記憶などをいろいろと話して下さいました。
シラバス的には小説創作について学ぶ授業なのだと思いますが、「小説の書き方など他人に教わっても身に付くものじゃない、それよりも自分の中にいろいろな経験を蓄積しなさい」と言ったようなことを教えて下さっていたのだと思います。
小川国夫先生は、じゃっかんお顔が大きめでいらっしゃるものの、彫りの深い、思慮深そうなお顔立ちで、若い頃はきっと素敵だっただろうなあと思わせる佇まい。
「そりゃあフランス娘にもモテたでしょう」と思ったものでした。
特に出席もとらず、期末にレポートさえ提出すれば単位をくれる授業だったというように記憶していますが、私は小川先生のお話が大好きで、その授業だけは、わりと真面目に出席していたものです。
そんな小川国夫先生の書かれた「私の聖書」。
講義形式だったり、エッセイであったり、いろいろな形で先生がキリストに対して思うこと、聖書に対して思うこと、キリストの弟子たちに対して思うことが書かれています。
聖書の中だけでなく、画家・ゴッホの絵にキリスト教が与えた影響や、ドストエフスキーの小説に出て来るキリスト教的考え方などについても述べられています。
キリストの弟子の、ダビデやサウロのエピソードなどもなかなか興味深いものでした。
でも、敬虔なキリスト教徒でいらっしゃる小川先生が、基本的に“聖書を知っている人”を想定して書かれた本書一冊では、やはりキリスト教の基本を知ることはやはりできませんね。。。
ちょっと、他の入門書などもいろいろと読んでみたいと思います。
それにしても、ここのところ軽い小説やビジネス書ばかり読んでいたのですが、本書を読んで「久しぶりに文学的な重い本が読みたい…」という欲求がふつふつ。
久々に、あのドストエフスキーの長くてごっつい小説でも読んでみようかな…。
でも、小川国夫先生の遺作である小説「弱い神」をまだ読んでいなかったことに気付いたので、まずはそちらを探してみようと思います。
新潮社
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