【本】きのうの神さま / 西川美和

きのうの神さま

『ディア・ドクター』『ゆれる』などで知られる映画監督・西川美和の書いた本「きのうの神さま」を読みました。
閉ざされた地方に暮らす小学生や、地方医療に取り組む医師などの姿を描いた「1983年のほたる」「ありの行列」「ノミの愛情」「ディア・ドクター」「満月の代弁者」の短編5作からなる短編集です。

もともと「僻地の医療を題材にした映画を作りたい」という希望を持っていた西川監督が、ポプラ社の取材支援で地方医療を取材した結果が、本書「きのうの神さま」と映画『ディア・ドクター』に結実したのだそう。

本書には「ディア・ドクター」と題された短編が収録されています。
実は、映画『ディア・ドクター』は観ていないので、はっきりと違いはわからないのですが、この短編「ディア・ドクター」は映画のアナザー・ストーリーとも言えるストーリーらしいです。

<STORY>
外科医だった父が倒れた。実家と“スープの冷めない距離”に住んでいる次男のぼくは、脳梗塞で病院に運ばれた父の元に駆けつける。父は目を覚まさないが、ぼくは病院で兄を待つことにした。兄は、幼い頃から外科医の父に憧れ、自らも医師を目指していたのだ。しかし、挫折し、サラリーマンになった兄は、だんだんと家に寄り付かなくなっていた。ぼくも、もう4~5年兄とは会っていない。そして、面会時間が終わる寸前、兄が現われた…。(「ディア・ドクター」。その他4編を収録)

<感想>
西川美和は、やはり映画監督、映像作家だけあって、小説を読んでいても描写がわかりやすく、はっきりと風景が目に浮かんできます。

閉ざされた山間部にある、子どもと中年、老人しかいない村の村祭りの風景。
晴れ渡った空の下に広がる、田舎の漁村の何もない風景。
夜の病院の照明を落とした廊下の風景。

本書の中には、こういった、満ち足りているような、淋しいような、何かが足りないような、そんな風景がたくさん詰まっています。
やはり、地方医療といったことがテーマになっているだけあって、時代の先端でもなく、メインストリームでもなく、対症療法的に日々をやり過ごすしかない人々が多く登場するのです。

映画『ゆれる』もそうでしたが(小説「ゆれる」は未読です)、西川美和の作品には、閉ざされた地域の中で、逃げることもできず、ただ日々が過ぎるのを待つ人間の気持ちが、よく表れているような気がします。

詰んだ人生だからこそ、濃く密接な人間関係が構築されるのでしょう。
それが心地よい人にとってはその場所はとても居心地がいいけれど、そういう空気が嫌いな人にとってはそういう環境は辛くてしょうがないはず。

でも、その中で生きていき、人と関わっていくのが人間なのかもしれません。

西川監督、私と同い年なのですが、非常に小さく可愛らしい感じの方です。
同い年の女性が、こうやって素晴らしいアウトプットを出されているのを見ると、あせるわー。。。

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