愛のタリオ / 마담 뺑덕
チョン・ウソンといえば『私の頭の中の消しゴム』で、若年性アルツハイマーのヒロインを献身的に愛する純愛の演技を見せ、日本中の紅涙を絞った韓国人イケメン俳優。
しかし、この『愛のタリオ』で彼が演じているのは、若い娘の処女を奪い、妊娠させてはあっさり捨て、妻をうつ病に追い込み、その妻が自殺した後も若い愛人を作って愛欲の限りを尽くし、違法カジノで豪遊すると言う、とんでもない外道男です。
そんな外道男の手にかかり、すべてをなくしてしまう若い女性を演じるのは、イ・ソム。
そして、そんな外道男の娘を演じるのは、『レッド・ファミリー』のパク・ソヨンです。
チョン・ウソンが見せる男のどうしようもなさ、イ・ソムとパク・ソヨンが見せる愛と憎しみを知った女の変貌ぶりが、なんとも恐ろしく、だからこそ面白い、身も蓋もない愛の物語と言えるでしょう。
<STORY>
大学教授のハッキュは、誤解から不祥事に巻き込まれ、妻子をソウルに残したまま、片田舎で小説講座の講師をすることに。そこでドクという少女と出会い、愛欲に溺れる。しかし、大学に戻れることになり、ハッキュは妊娠したドクをあっさり捨ててしまう。うつ病患者のハッキュの妻は自殺するが、ハッキュは作家として成功を収めた。裏カジノで若い愛人と共に放埒の日々を送っていたハッキュだが、放蕩がたたり、徐々に視力を失っていく。
<Cheeseの解説>
盲目の父親の目を治すために海に飛び込み犠牲となる娘を描いた韓国民話「沈清伝(シムチョンジョン)」。
この民話を下敷きに、人間の愛と欲望を描いたのが、本作『愛のタリオ』です。
この映画、ある男が若い女性にひどいことをし、その報いを受けるという物語。
一見、主人公はチョン・ウソン演じる大学教授・ハッキュと、彼に捨てられるイ・ソム演じるドクであるかのように見えます。
しかし、「沈清伝(シムチョンジョン)」の主人公は、盲目の男の娘。
つまり、パク・ソヨン演じるハッキュの娘・チョンが、テーマを体現しているキャラクターなのです。
このパク・ソヨン、『レッド・ファミリー』で北朝鮮から韓国に潜入している少女スパイを演じていた少女。
勝ち気で利発な役柄がぴったりの、大きな目が印象的な少女です。
このパク・ソヨン、本作では親の愛を求める淋しさを奥に秘めながらも、父を憎み、愛する少女を情熱的に演じています。
しかも、ちょっと大人になって、色っぽさも増しているという…。
彼女の見せる淋しげな表情や、妖艶な微笑みは本当に素晴らしく、彼女の存在が『愛のタリオ』という邦題を、見事に象徴しています。
“タリオ”とは、ラテン語で「目には目を、歯には歯を」などの言葉で知られる“同害刑”を意味する言葉。
愛という名のもとで相手を傷付けた人間に、愛と、同じだけの傷を与える…ということなのかもしれません。
もちろん、激しい外道っぷりを見せたチョン・ウソン、役柄によって豹変する見事な女優魂を見せたイ・ソムの演技も、見どころたっぷりなのですけどね。
思った以上に激しいベッドシーンが多いので、チョン・ウソンファンの方は逆にショックかもしれません。
それにしてもパク・ソヨン、『レッド・ファミリー』でも船の上で運命が大きく変わる役柄を演じていましたね。
船の上に何か縁があったりするのでしょうか。。。
『愛のタリオ』(112分/韓国/2014年)
原題:마담 뺑덕
英題:Madam Ppang-Deok
公開:2015年2月7日
配給:CJ Entertainment Japan
劇場:シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて順次公開
監督・脚本:イム・ピルソン
製作総指揮:チョン・テソン
撮影:イ・ソンジェ
音楽:モグ/イ・ウンジュ
出演:チョン・ウソン/イ・ソム/パク・ソヨン/キム・ヒウォン
Official Website:http://ainotalio.com/
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