【映画レビュー】カンフー・ジャングル／一個人的武林

2015/10/2 外国映画か行, 映画レビュー

“宇宙最強の男”ドニー・イェンが主演、アクション監督として、また新たなるカンフー映画の世界を見せてくれた映画『カンフー・ジャングル』。

現代に武術を極めるとはなんなのか、皮肉や悲哀を込めつつ、最強の男たちの戦いを描くいた本作。
やはりクライマックスの大型車が行き交う行動上の戦いは圧巻です。
そして、数多のカンフー映画の先達へのリスペクトを込めたエンディングには、思わず感動必至。

功夫映画ファンにはぜひ観て欲しい血沸き肉踊る一作です！

＜STORY＞
警察の武術教官のハーハウ・モウは、試合中に対戦相手を殺してしまい、服役していた。そんな中、武術界チャンピオンの連続殺人が起こり、ハーハウは捜査主任のロク警部へ捜査協力を申し出て、仮釈放となる。そのチャンピオンたちは、自分が極めたと言われる技で、それぞれ殺されていた。佛山武術館合一門派の宗師であるハーハウは、妹弟子のシン・インを守るため、彼女のもとに駆けつける。彼には犯人の目星がついているのか…？

＜解説＞
ことの起こりは、ある連続殺人事件。
南拳王、北腿王、擒拿王、武器王と呼ばれる、カンフーの各門派のチャンピオンが次々と殺される事件が起こります。
試合中に対戦相手を殺してしまい、刑務所に入っていたドニー・イェン演じるモウは、ロク警部らとともに、犯罪捜査に乗り出すことになります。

一見、犯人を追うミステリーのようにも思えますが、この映画が描いているのは“カンフーを極めた男の生き様”。
殺人拳でもある“カンフー”を極めるとはなんなのか？
武術家の世界で一位を極めることで、何が得られるのか？
カンフーとは、もう時代遅れの存在なのか？
武術界の認める最高の使い手になろうと「天下第一」を目指し、やがて行き着く先が見えなくなってしまった男を描いているのです。

少年時代に少林寺で修行を積んだ経験を持つ俳優・ワン・バオチャンが、そんな疑問を抱いてしまった男を演じ、何かに取り憑かれたような演技を見せています。
彼は、映画の中で言わば十種競技とも言えるような、南拳、北腿、擒拿、刀法、棍法などの様々なアクションを披露しています。

そして最後に、ドニー・イェンと13分にもわたる激闘を披露するのです。
この激闘、横を激しく車が行き交う高速道路で行われます。

目の前の敵との激しい死闘、それ以外にすぐ脇を通る車とぶつかることのないよう、四方八方から襲いくる危険の中で、自らの技を最大限に発揮して戦うドニー・イェンとワン・バオチャン。
この手に汗握る凄まじい戦いは、カンフー映画ファンならずとも、アクション映画ファンにはぜひ観て欲しいところです。

熱狂的なファンはもちろんいるけれど、今となっては多少時代遅れな存在となってしまった“カンフー映画”。
本作『カンフー・ジャングル』は、そんな功夫映画の先達たちに大いなるリスペクトを込めて作られています。
映画の中のテレビで、かつての功夫映画の名作『ドランクモンキー酔拳』や『秘技・十八武芸拳法』などが流れ、ショウ・ブラザース（邵氏兄弟有限公司）のスターだったデヴィッド・チャンや製作者のツイ・シウミン（徐小明）、カー・アクションのブルース・ロウ（羅禮賢）、武術監督で俳優のユエン・チュンヤン（袁祥仁）、マン・ホイ（孟海）やシャロン・ヨン（楊分分）、監督のアンドリュー・ラウ（劉偉強）やソイ・チェン（鄭保瑞）、ゴールデン・ハーベスト社（嘉禾電影有限公司）の創立者レイモンド・チョウ（鄒文懐）らが登場し…。
さらに、エンドクレジットでは、彼らに偉大なる先達へのリスペクトのメッセージが流れます。

先人たちへの敬意を表したテディ・チャン監督の、カンフー映画に対する愛に、思わず胸が熱くなりました。

『カンフー・ジャングル』（100分／中国＝香港／2014年）
原題：一個人的武林
英題：Kung Fu Jungle
公開：2015年10月10日
配給：ギャガ・プラス
劇場：新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開
監督：テディ・チャン（陳徳森）
アクション監督・出演：ドニー・イェン（甄子丹）
出演：ワン・バオチャン（王寶強）／チャーリー・ヤン（楊采妮）／ミシェル・バイ（白冰）／アレックス・フォン（方中信）／ルイス・ファン（樊少皇）／ユー・カン（喻亢）／ディープ・ン（呉浩康）／シー・シンユー（釋行宇）
Official Website：http://kung-fu-jungle.gaga.ne.jp/