【映画レビュー】ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン / House of Cardin

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ピエール・カルダンと言えば、その名前は知っているけれど、どちらかというライセンス商品のイメージが強く、どんなルックをデザインした人なのか、実はあまり知らなかったのです。
「ピエール・カルダン? 実家にあったグラスとかタオルに名前入っていた人でしょ? おしゃれなの?」くらいのイメージ。

しかし、そのイメージはこのドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』で打ち砕かれました。
むしろ、「なんてすごいデザイナーなんだ……。彼のことをまったく知らなかったなんて、なんて恥ずかしい!」と自分の無知を呪いたくなるほど。

彼が1966年にデザインした「コスモコールルック」や、円をモチーフにしたAラインのドレスなどは、今見てもモダンでファッショナブル。古さなど微塵も感じさせません。

考えてみれば、こんな極東の国の片田舎の、大してファッションに興味があったわけではないような家にもそのグッズがあるなんて、それだけでもすごいこと。
1960年代にオートクチュールだけではなく、プレタポルテに進出し、メンズファッションのデザインを開始し、ライセンス生産品で日本、中国、ソ連などの(当時の)ファッション後進国に影響を与えたすごいデザイナーが、ピエール・カルダンその人なのです。

1922年生まれ、2020年で98歳の現在も意気軒昂で、意欲あふれる愛すべきおじいちゃん、そんなピエール・カルダンのドキュメンタリー映画、ファッションに興味がある人にとっては必見の一作と言えるでしょう。

 
<STORY>
1922年生まれのファッションデザイナー、ピエール・カルダン。90代となってもなお意欲的な活動を続ける彼は、ファッション界に多くの革命をもたらしてきた。オートクチュール・デザイナーでありながらデパートでのプレタポルテ(既製服)発売、紳士用ブティックのオープン、日本、中国、ソ連などへの一早い進出と、さまざまなジャンルの商品へのライセンス展開など。カメラは、彼の功績と共に、数々のインタビューを通じ、彼の人となりを追う。

 
<解説>
ピエール・カルダン。
彼のバイオグラフィーには、華々しくも革新的な業績が並び、錚々たるセレブリティの名前が挙がってきます。
それだけ、彼が成し遂げてきた仕事の数々が、世界のファッション業界をリードし、ファッションのみならず芸術や芸能、食の分野にも影響を与えていることがわかります。
ここで、簡単にその業績を列挙してみます。

1939年 フランス・ヴィシーでファッションの仕事を始める。
1945年 パリに移住。ジャン・コクトーの映画『美女と野獣』で衣装や仮面を担当。
1946年 コレクション・デビュー時のクリスチャン・ディオールのアトリエ立ち上げに参加。
1950年 独立。映画、演劇、バレエなどの衣装を担当。
1953年 初のオートクチュール・コレクションを発表。
1954年 「バブルドレス」が高い評価を受ける。
1958年 紳士用ブティックをオープンし、男性モード界に進出。
     初来日。文化服装学院で立体裁断の講義を行う。高田賢三森英恵桂由美らが受講。
1959年 婦人用プレタポルテ・コレクションを発表。
1966年 子ども服を発表。
1968年 食器のライセンス契約を締結。ライフスタイルのデザインに進出。
1970年 「エスパス・ピエール・カルダン」劇場を開設。
1976年 芸術家具「エヴォリューション」を発表。
1979年 中国でファッションショーを開催。
1981年 パリの老舗レストラン「マキシム・ド・パリ」を買収。
1991年 モスクワ・赤の広場でファッションショーを開催。
2001年 マルキ・ド・サド公爵ゆかりのラコスト城のオーナーに。毎夏、フェスティバルを開催。
2014年 パリにカルダン美術館をオープン。

 
いち早くプレタポルテを開始し、男性ファッションを手がけ、子ども服のブティックもオープン。
家具のコレクションも発表。110ヵ国で800ものライセンス契約を結び、自動車、飛行機、食器、香水、タオルなどの生活雑貨と、さまざまな分野の製品をライセンス生産しています。
まさに、世界各国で、男性も女性も子ども、生活全般においてカルダンのデザインがあふれていたのです。

彼のデザインは、ジャンヌ・モローブリジット・バルドーら、多くのセレブリティに愛されていました。
ビートルズが彼のデザインした襟なしジャケットを着用している姿を覚えている人も多いでしょう。

さらに、カルダンは50年も前にダイバーシティを実践していました。
日本人モデルの松本弘子をメインモデルに据えたり、さまざまな人種・さまざまな肌色のモデルをショーに起用するなど、白人モデルが中心だったモデルの世界に、新たな風を吹き込みました。

中国の万里の長城やモスクワの赤の広場でファッションショーを行うなど、ファッション後進国の人々に“ファッションの楽しさ”を教えた先生でもあるのです。

また、ジャン=ポール・ゴルチエフィリップ・スタルクらの才能を見抜き、自身のアトリエに起用しました。
日本の文化服装学院で立体裁断を教えた際には、高田賢三、森英恵、桂由美ら、日本を代表するデザイナーたちがその講義を受講しています。今も文化学園大学では立体裁断の講義が行われているそうで、日本の多くのデザイナーが間接的に彼の影響を受けていると言えるでしょう。

デザイン以外の分野でも、「エスパス・ピエール・カルダン」では無名だった俳優のジェラール・ドパルデューの才能を見出したり、ロック・ミュージシャンのアリス・クーパーを「エスパス・ピエール・カルダン」に招くなど、ジャンルを超えた審美眼を見せています。
彼の功績を上げようとすると枚挙に遑がありません。

また、彼は愛においても奔放でした。
若い頃から美男だった彼と、ジャン・コクトーら多くの文化人が「寝たがった」そう。
そして、女優のジャンヌ・モローから熱烈に愛され、彼女の映画衣装をデザインするとともに、パートナーとして一時期を共にしました。
アンドレ・オリヴィエとも、関係を公にすることはありませんでしたが、公私にわたるパートナーとして深い信頼関係を築いていたそうです。
詳細は不明ですが、ライバル関係にあったイヴ・サンローランのある事件なども、少し触れられていたりもし、その華やかな交友関係には舌をまくばかり。。。

こんなすごい功績を持つピエール・カルダンですが、もうすぐ100歳となる今も意気軒昂。
ユーモラスにかつての思い出を語り、静かにこれからの展望を語ります。
その様子からは、ファッション界の革命児はいまだ健在であることがうかがえます。
これだけの帝国を一大で築き上げた帝王ならば、これからもすごいことをやってくれるだろう。ひょっとしたら後20年くらい生き続け、帝国を発展させ続けるかもしれない…。
なんだか、そんな気がしてくるのです。

このドキュメンタリー映画の監督であるP・デビッド・エバーソール&トッド・ヒューズは、プライベートでもカップル関係にあります。
共に暮らす家のインテリアを選んでいるときに、カルダンの家具に接し、その魅力に魅入られたのだとか。
その縁で、このドキュメンタリー映画が実現したのだとか。
彼ら自身もその僥倖に「え、ドキュメンタリーを作らせてくれるの?」と驚いたそう。

2020年、独立から70周年を迎えるこのタイミングで製作されたのは必然かもしれません。
カルダン自身、本作を初めて観たあとに「すべて真実だ!」と認めていたそう。まさにお墨付き。
ファッション界の革命児の功績を集め、彼の愛すべき人となりを明らかにしたドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』。ファッションに興味がない人でも、プエール・カルダンを愛してしまうような、そんな素敵なドキュメンタリーでした。

 
『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』(101分/アメリカ=フランス/2019年)
原題:House of Cardin
公開:2020年10月2日
配給:アルバトロス・フィルム
劇場:Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて
監督:P・デビッド・エバーソール/トッド・ヒューズ
編集:ブラッド・コンフォート
出演:ピエール・カルダンジャン=ポール・ゴルチエシャロン・ストーンナオミ・キャンベルアリス・クーパーフィリップ・スタルクジャン=ミシェル・ジャールディオンヌ・ワーウィック高田賢三森英恵/グオ・ペイ/ジェニー・シミズ/トリーナ・ターク/桂由美/エイミー・ファイン・コリンズ
Official Website:https://colorful-cardin.com/

 

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