【映画レビュー】嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん

幼少時に監禁され、性的虐待を受け、殺人を目撃・体験させられたという過酷なトラウマを持つ少女と、彼女を見守る少年の同棲生活を、ファンタジックに描いた映画『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』

入間人間人気ラノベが原作だそうで、確かにキャラ設定やセリフまわしはラノベ的。
原作未読の人間からすると、まーちゃん役の大政絢はなかなか頑張っているように思います。
みーくん役の染谷将太の表情のない演技も、とても印象に残ります。嘘だけど。

<STORY>
一人暮らしの女子高生・御園マユの部屋に、あやしい男が現われた。男はマユを「まーちゃん」と呼ぶ。彼はマユと一緒に10年前に拉致・監禁されていたみーくんだったのだ。みーくんの登場を喜び、はしゃぐマユ。しかし、みーくんはマユのマンションで行方不明の小学生の姉弟を発見する。マユは、自分とみーくんがされていたように、幼い兄弟を誘拐し、監禁していたのだ。みーくんはマユのマンションで暮らし始め、姉弟の世話もすることになる。

<解説>
虐待などの体験により心を病んだ少女が、精神のバランスを保つためにファンタジックな妄想を抱く…という描写は、映画『プレシャス』などでも描かれていました。
本作では、まさしく“殺さなければ殺される”というような激烈な体験をしてきたまーちゃんこと御園マユがみている、夢のような世界が描かれます。

みーくんさえいればまーちゃんの世界は天国で、みーくんがいなければそこには何もないのです。

そんな空虚なまーちゃんを、みーくんは支えていきます。
そして、そんな二人を見守るのは、鈴木京香演じる精神科医の坂下恋日先生や、田畑智子演じる刑事の上社奈月。
いかにもラノベ的なネーミングの坂下先生のダサ系ロックファッションや、上社刑事のネイティブな関西弁が、なかなか楽しいです。

本作の監督を務めたのは、これが長編監督デビューとなる瀬田なつき。
リアルな風景なのに、どこか現実感のない印象を受ける作風が印象的です。
個人的には、もっとポップに弾けて欲しかった気がしますが、リアルなのか虚実なのかのギリギリ境目を描き出そうとしていたのかもしれません。

ちなみに、本作で最も印象に残ったのは、誘拐犯を演じた鈴木卓爾でした。

鈴木卓爾と言えば、映画『ゲゲゲの女房』の監督を務めた人です。
あの映画を観て、「きっと朴訥な感じのいい人なんだろうなー」などと、勝手な印象を抱いていたのですが…。
いや、確かに本作でも朴訥と言えば朴訥なんですけどね。

本当にすさまじい演技で、身の毛がよだっちゃいました。

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(110分/日本/2010年)
公開:2011年1月22日
配給:角川映画
劇場:角川シネマ新宿、シネマサンシャイン池袋ほか全国にて
原作:入間人間
監督・脚本:瀬田なつき
出演:大政絢染谷将太田畑智子鈴木京香原舞歌/石川樹/宇治清高/山田キヌヨ/鈴木卓爾三浦誠己
公式HP:http://www.usodakedo.net/

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