【映画レビュー】ロスト・アイズ／ Los ojos de Julia

2011/5/26 外国映画ら行, 映画レビュー

『パンズ・ラビリンス』、『ヘルボーイ』のギレルモ・デル・トロが製作を務めたスペイン映画『ロスト・アイズ』。

“目が見えなくなることの恐怖”、“人の顔が見えない恐怖”を映像的にうまく表現していて、なかなか面白い映画です。

冒頭の超常ホラーのような展開から、中盤の謎解きミステリー、終盤のサイコホラーから怒濤の感動ラブストーリーへの流れは、他の作品では見られないもの。
映像表現も面白く、なかなか見応えのある一作だと思います。

＜STORY＞
全盲の女性・サラが自宅の地下室で首を吊って自殺した。サラの双子の妹・フリアは姉の自殺を疑い、サラの友人関係を調べ始める。どうやらサラには恋人がいたらしいが、その男性の姿を見た者はいなかった。そして、フリアの周りにも、不振な人影がチラつき始める。その頃、姉と同じ病気のフリアも、だんだんと視力が弱くなっていた。後１ヶ月でフリアも完全失明してしまうという。フリアの夫・イサクは、彼女がショックを受けないよう気遣っていたが…。

＜解説＞
この映画の主人公、フリアは、失明した双子の妹の自殺により、一人で暮らしていた妹の家にやってきます。
葬儀などを済ませるうちに、姉の周りにいる“怪しい存在”に気付くフリア。
彼女は、その存在を追いかけていくうちに、彼女の身の回りにも“怪しい出来事”が起こり始めます。

何かが自分を見張っている…。
そんな彼女は疑心暗鬼に陥り、周囲の人間を信じられなくなってしまい、誰も彼もを疑い始めます。
そして、自分を心配してくれている夫のイサクさえも、信じられなくなっていきます。

双子の妹の死、参考人の死、夫の死、自分の失明、目の手術…。

フリアの周りには、あまりにも過酷な出来事がどんどん起こります。
観ていて「それはないだろ」「そこはもっと考えようよ」とツッコミたくなることが何度もありますが、「まあ、スペインってそういう国なのかな。。。」などと自分をゴマカしつつ観ていると、だんだんと面白くなってきます。

特に、フリアが目を手術した後の、「目に光を当ててはいけない」状態の時の描写が、なかなか秀逸です。
目に包帯を巻いたままなので、自分の世話をしてくれるイバンの顔も見ることができない。
自分がいる部屋の様子もよくわからない。

世話人のイバンの言葉だけを信じ、彼の言う通りに暮らす日々は、なかなか快適なものなのです。
目を開けると、そこにどんな世界が広がっているのかも知らずに…。

失明のリスクを取って真実を知る勇気を持つか、リスクは犯さずに真実を知らないままでいるか。
結果、どちらのリスクが大きいのかは、後にならないとわかりません。

しかし、“真実を知ったこと”が、彼女に心の平穏をもたらすこともあるでしょう。
目が見えた時には気付かなかった“真実”を、知ることができたのですから。

それにしても、“本来の姿が見えない状態”というのは、本当に恐ろしいものです。
でも、人間というのは、本来“本当に思っていること”を表には表さないことのほうが多いもの。
そう考えると、一番恐ろしいのは、人間だということなのでしょうか…。

別コラム：オトコに見せたいこの映画『ロスト・アイズ』

『ロスト・アイズ』（112分／スペイン／2010年）
原題：Los ojos de Julia
英題：Julia’s Eyes
公開：2011年6月18日
配給：プレシディオ
劇場：ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて
製作：ギレルモ・デル・トロ
監督・脚本：ギリェム・モラレス
出演：ベレン・ルエダ／ルイス・オマール／パブロ・デルキ／フランセスク・オレーリャ
公式HP：http://www.facebook.com/losteyes.movie

ロスト・アイズ（字幕版）