【映画レビュー】ガールフレンド・エクスペリエンス / The Girlfriend Experience
スティーヴン・ソダーバーグ監督が、ポルノ女優のサーシャ・グレイを起用して高級エスコート嬢(平たく言えばコールガール)の5日間を描いた映画『ガールフレンド・エクスペリエンス』。
NYに暮らす時給2000ドルのエスコート嬢は何を食べ、何を思い、どんな生活を送っているのか?
スタイリッシュな映像とスノッブな情報満載で、NYの空気感を写し取った一作です。
『セックスと嘘とビデオテープ』を思い出す人も多いはず…。
<STORY>
2008年秋、リーマン・ブラザーズ証券が破綻し、NYの景気は落ち込んでいた。人々は口々にリーマン・ショックともうすぐ行われる大統領選について語る。高級エスコート嬢・チェルシーの客たちも、口を開けば経済問題ばかりだ。1時間に2000ドルを稼ぎ出すチェルシーは、恋人のクリスと同棲しながら、自らでマネジメントをしてエスコート嬢を続けていた。そんなある日、チェルシーは信望している人格学上、最高に相性のよい客と出会う。
<解説>
2008年秋、『チェ 28歳の革命』&『チェ 39歳別れの手紙』と『インフォーマント!』の撮影の合間に、ぽっかり空いたスティーヴン・ソダーバーグのスケジュール。
その2週間を利用して、ソダーバーグはこの作品を撮影したそうです。
(どれだけ映画作りが好きなんだ、ソダーバーグよ…)
そういう経過もあり、尺も77分というこの作品、ドラマというより、時代の空気を映し出したプロモーション・ビデオというような雰囲気です。
ストーリーもあってないようなものだし、時制もいろいろ前後するので、前後関係や人間関係も分かりづらかったりも…。
主人公のチェルシーとクライアントたちが訪れるのは、いずれもNYの最先端のレストランやホテルの数々。
必要以上に映し出されるレストラン名などが、スノッブな雰囲気を醸し出します。
そして、主人公たちが交わす会話の数々も、台本に書かれたものではなく、役者たちが自然にしゃべっているものだそうです。
(台本には、シチュエーションと役名しか書かれていなかったとか)
役者たちの会話の内容は、その撮影時、2008年秋に話題になっていたこと…。
アメリカ大統領選であり、オバマ候補であり、マケイン候補であり、リーマン・ブラザーズ証券の破綻のことばかり。
「不景気だ」とみんなが口々に語り、これからのアメリカの様子にどこか不安を持っている様子が見てとれます。
チェルシーの周囲の人々はエグゼクティブばかりという設定。
みな、最先端の高価そうなファッションに身を包み、高価そうなレストランで最新流行の料理を口にしながら、将来への不安を滲ませているのです。
主人公チェルシーを演じるサーシャ・グレイは、そんな不安定な時代を映し出すのにぴったりな存在。
キーラ・ナイトレイ似のクールな美貌とスレンダー・ボディの持ち主の彼女。
ポルノ作品だけではなく、アーティストや作家としても活動している才女だそうです。
しかし、美しいポルノ女優というのは、人々のある種の憧れの存在でもあるものの、セックスを売り物にしている以上、ある種の侮蔑の対象でもあるでしょう。
そんな、憧憬と侮蔑、両方の目で見られる美女である彼女だからこそ、今のアメリカを映し出すのにふさわしい存在なのだと思います。
エスコート嬢・チェルシーの未来は、アメリカ経済や世界情勢と同じように、不安定なもの。
そんな不安定な中、どうやって人々は生きて行くのか、どんなつながりを求めるのか…。
不安定な情勢の中で、それぞれ懸命に生きる人々の姿を、スタイリッシュな映像で描いた作品でした。
『ガールフレンド・エクスペリエンス』(77分/アメリカ/2009年)
原題:The Girlfriend Experience
公開:2010年7月3日
配給:東北新社
劇場:シネマライズほか全国にて順次公開
監督・撮影・編集:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:サーシャ・グレイ/クリス・サントス/マーク・ジェイコブスン/グレン・ケニー/フィリップ・アイタン
公式HP:http://www.tfc-movie.net/girlfriend/
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