自由と壁とヒップホップ / Slingshot Hip Hop

試写で拝見して、とても心を動かされた映画『自由と壁とヒップホップ』
でありながらも、なかなかこの作品のレビューに手をつけることができませんでした。

なぜなら、それは私があまりに無知だから。
イスラエルの現状、パレスチナの現状、イスラム教徒の置かれた現実。
それらについて私は正確な知識を持っていない私が、何を言っても間違っているのではないかと不安になったからです。

パラスチナ人ラップグループのDAMは、イスラエル領内のパレスチナ人地区暮らし、「誰がテロリストなんだよ?」とラップで世に問いかけます。
現状に翻弄されつつも、それに抗い、ラップの力で世界を変えていこうとしている彼ら、パラスチナ人ラッパーたちの姿を映し出したドキュメンタリー映画『自由と壁とヒップホップ』
パレスチナやイスラエルについて知らない人にこそぜひとも観て欲しい、力を持った一作です。

<STORY>
イスラエル領内のパレスチナ人地区で生まれ育ったパラスチナ人ラップグループ・DAM。1990年代の後半にグループを結成し、ラップで歌い続けてきた。そんな彼らに憧れて、パレスチナでは多くの人がラップで政治問題やジェンダー差別などに対する抵抗を表現しているのだ。分断されているガザ地区ではPR(パレスチニアン・ラッパーズ)というラップグループも活動していた。DAMはPRやその他のグループを集めての音楽フェスを企画するが…。

<Cheeseの解説>
このドキュメンタリー映画『自由と壁とヒップホップ』監督であるジャッキー・リーム・サッロームは、アラブ系アメリカ人。
シリア人の父とパレスチナ人の母の間に生まれた彼女は、母親がパレスチナ人であることを隠そうとしていたこともあるそう。
しかし、DAMの歌う「Who is the Terrorist?」を聞き、パレスチナにラップグループがあることを知り、このドキュメンタリーを作ります。

ここで描かれているのは、パレスチナ人ラッパーたちが日々直面している事実。
占領、差別、貧困。
イスラエル領内パレスチナ人地区で暮らす彼らの周りには壁や検問があり、同じパレスチナ人たちが暮らすガザ地区へ行くのも簡単ではありません。

そんな中で、DAMやPRたちは歌で世界に自分たちの意識を表明し、政治的なメッセージを発信しているのです。
ムスリムの女性ラッパーのアビール・ズィナーティは、セクシーなタンクトップ姿でイスラム教徒の女性の苦しみや哀しみを切なげな声で歌います。

彼らの姿は、ステレオタイプな“イスラム教徒像”とはまったく違うもの。
彼らは、私達と同じようなただの若者で、自分たちの置かれている抑圧された状況や、政治に翻弄されることへの不満を、自分の言葉でラップとして私達に伝えてくれます。

彼らのラップは、まさにパレスチナ人の若者たちの魂の声。
何を言っているかはわからなくても、とても心に響きます。

彼らの魂の叫び、そしてこのドキュメンタリー映画『自由と壁とヒップホップ』が、現状を変えていく楔の一つとならんことを、心より願います。

『自由と壁とヒップホップ』(86分/パレスチナ=アメリカ/2008年)
原題:Slingshot Hip Hop
公開:2013年12月14日
配給:シグロ
劇場:シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開
監督:ジャッキー・リーム・サッローム
出演:DAM/アビール・ズィナーティ/PR/マフムード・シャラビ/ARAPEYAT
公式HP:http://www.cine.co.jp/slingshots_hiphop/

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