【映画レビュー】プリデスティネーション / Predestination
2008年に『デイブレイカー』でイーサン・ホークを主演に迎え、一風変わった吸血鬼映画を作り上げた双子のマイケル&ピーター・スピエリッグ監督。
彼らが再びイーサン・ホークを主演に迎えて製作した独特のタイムトラベル映画が、『プリデスティネーション』。
バイオリンケースのような時空移動機を手に、1940年代から1970年代、1980年代を移動する時空警察のエージェントを描いています。
タイムトラベルという未来的なテーマを独特の映像と解釈で描くこの作品、短尺でぴりっと面白い、不思議な感覚のSF映画です。
<STORY>
時空警察のエージェントは、1975年にNYで巨大な爆発事件を起こす“フィズルボマー”という爆弾魔を追っていた。彼の逮捕のため、エージェントは1970年のNYに飛び、あるバーにバーテンダーとして潜入する。そこに“未婚の母”というライターが現れ、彼に自分の数奇な運命を語り出す。彼女は孤児院の前に捨てられており、ジェーンと名付けられ、変わり者の少女として育った。そんな彼女は政府系企業スペースコープで様々な訓練を受けるが、適性試験で落選してしまう。そして、ある男性と恋に落ち彼の子どもを妊娠するが、その男性は姿を消したという…。
<解説>
映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の原作である「宇宙の戦士」(1959年)などを著した小説家、ロバート・A・ハインライン(1907年~1988年)。
“SF界の長老”と呼ばれた彼が1959年に著した小説「輪廻の蛇」を映画化したのが、本作『プリデスティネーション』です。
時空を旅する捜査官を主人公にタイムパラドックスをテーマとした2014年に作られた作品ですが、原作が1959年に書かれており、主な舞台が1970年代と1940年代ということで、どこかレトロな雰囲気。
劇中で描かれる“宇宙旅行のための政府系企業”スペースコープ社の様子など、かなりレトロフューチャーで素敵です。
ここで描かれるのは、ある一人の人間の数奇な運命。
究極の自己完結というか、究極のタイムパラドックスとも言える物語で、荒唐無稽と言えばそうなのですが、不思議な説得力があります。
この映画を観た後は、タイムパラドックスとは何か、タイムトラベルとは何か、思わず調べてみたくなるでしょう。
複雑なストーリーの謎解きを、レトロな映像で見せることで不自然に見せないスピエリッグ兄弟の手腕、なかなか上手です。
前作の『デイブレイカー』もそうでしたが、独特の世界観構築がうまいのでしょうね。
劇中でさりげなく出てくる“卵が先か、にわとりが先か”という言葉や、ジュークボックスで流れる古い曲「I’m My Own Grandpa」など、さりげない暗示がいくつか。
こういった暗示を見つけるのも、なかなか楽しい作業と言えるでしょう。
『プリデスティネーション』(97分/オーストラリア/2014年)
原題:Predestination
公開:2015年2月28日
配給:プレシディオ
劇場:新宿バルト9ほか全国にて
原作:ロバート・A・ハインライン
監督:マイケル・スピエリッグ/ピーター・スピエリッグ
出演:イーサン・ホーク/サラ・スヌーク/ノア・テイラー
公式HP:http://www.predestination.jp/
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