【映画レビュー】プール
STORY
さよは、卒業旅行に一人でタイのゲストハウスを訪れた。そのゲストハウスではさよの母・京子が住み込みで働いていたのだ。そのゲストハウスでは、年配の菊子、30代の青年・市尾、そして京子という3人の日本人スタッフと、ビーという、母親のいないタイ人少年が協力し合って暮らしていた。自分と祖母を捨て、タイにやって来た母。自分をほったらかしにしながら、ビーの母親のように振舞っている京子に苛立ちを覚えるさよだが…。
解説
なんというか…、中途半端な印象を受けました。
何もカタルシスがなく、登場人物たちがすべてのものから逃げているように感じられてしまうのです。
菊子さんはまあしょうがないとして、母と娘を置いて「そうしたいと思ったから」タイにやって来た京子と、「親とうまくいかなくて」タイにやって来た市尾くん。
もちろん、自分がしたいように生きていくのもいいと思うのですが、「やりたいようにした方がいい」からと置いて行かれた人間はたまったものじゃないでしょう。
身勝手な母へ、娘が今まで抱いていたそんな不満をぶちまけようとした時に、「さ、食べちゃおう」と食事をよそって話を終わらせてしまうのは、どうかと。
ここで京子が何か娘へメッセージをきちんと伝えて、その後に淡々と食事を再開した方が、映画として効果的な気がします。
そういう、登場人物同士の葛藤はすべて回避され、ただ淡々と日々の生活を描き続けるこの映画の描写に、若干の違和感を感じてしまいました…。
また、舞台がタイである必然性もあまり感じられないし、設定を活かしきれていない気が。
最初と最後に申し訳程度に“仏教国・タイ”的なモチーフが出て来ますが、ストーリーに溶け込んでおらず、なんだか付け足しのように感じられます。
どうにも全てが中途半端でしっくり調和していない気がするこの作品。
もたいまさこ、小林聡美、加瀬亮という荻上直子監督作色の強いキャストを使いながら、大森美香監督がメガホンをとっているという時点で、調和がとれていないのは当たり前かもしれません。。。
勝手に荻上直子監督の作品だとばかり思っていた私は、映画の最後の「監督:大森美香」というクレジットを見て、
「それがオチなのか~」
と、一人で驚いてしまいましたよ。。。
作品情報
『プール』(96分/日本/2009年)
公開:2009年9月12日
配給:スールキートス
劇場:シネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて
監督・脚本:大森美香
原作:桜沢エリカ
出演:小林聡美/加瀬亮/伽奈/シッティチャイ・コンピラ/もたいまさこ
公式HP:http://pool-movie.com/
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