【映画レビュー】おろかもの
結婚を目前に控えた兄が浮気していることを知った高校生の妹が、兄の愛人と結託して兄の結婚を阻止しようとする姿を描いた映画『おろかもの』。
インディーズの若手映画監督にとっては登竜門として知られる田辺・弁慶映画祭(2020年・第13回)でグランプリ・俳優賞・観客賞を含む史上初の最多5冠を受賞した本作。
メジャー俳優も出ていない地味な物語ではありますが、注目の才能が顔を揃えた、要注目の一作です。
<STORY>
幼い頃に両親を亡くし、二人で生きてきた高城兄妹。兄の健治が結婚することとなり、高校生の妹・洋子は複雑な心境を抱いていた。そんな健治が浮気していることを知った洋子は、浮気相手の女性に会いに行く。浮気相手の女性・美沙は「私、お兄さんを愛してるの」と悪びれず、洋子に電話番号を渡してくる。兄嫁となる果歩を好きになれないでいる洋子は、美沙に、兄・健治と果歩の結婚を邪魔しないかと提案。洋子と美沙はだんだん仲良くなっていく……。
<解説>
ずっと二人で暮らしてきた家に、兄嫁となる女性が入ってくることとなり、違和感と不満を感じている女子高生・洋子。
そんな洋子が、兄が何食わぬ顔で浮気を繰り返していることを知り、兄の愛人である美沙と仲良くなっていく姿を描く本作。
大好きな兄がクズ男であったというショック。
それでも兄のことを嫌いになれない家族としての愛。
兄を奪う兄嫁への軽い憎しみ。
まだ恋愛に憧れる年頃である洋子にとっては、兄と結婚して家庭を築こうとする兄嫁の果歩より、一途に兄に恋している美沙の方が、まだ理解が及ぶ存在。
それで、果歩を嫌う心も相まって、気持ちを美沙の方へ向かわせてしまうのです。
そして、美沙の方も、嫌いになりきれない健治への恋心を理解してくれる洋子と共に、健治の部屋に入れてもらったり、健治と果歩のデートを尾行したりすることで、すこしずつ恋心を消化していきます。
洋子がいなければ、美沙は健治への気持ちをただこじらせていたのかもしれません。
二人は、健治という男性を介して出会い、共犯者として絆を深めていきました。
健治は兄としてはいい兄なのかもしれませんが、男としてはある意味、クズ。
人を拒絶できない優しさが、女性を不幸にしていることにも気付かず、ただ曖昧に微笑んでいるのです。
人から求められると断れず、無自覚に人を傷つけている、そんな人たらしな男。
妹は、自分に見せないそんな兄の顔を知り、彼女自身も傷ついて、少し大人になっていくのでした。。。
美沙と洋子、そして果歩。
健治をめぐる女性たちは、ある意味みんなとても素敵な女性です。
笠松七海、村田唯、猫目はちという女優陣が、女性も弱さと強さをまっすぐに表現しています。
イワゴウサトシ演じるダメ男・健治もどこか憎みきれず……。
見終わった後に、登場人物みんなを好きになってしまうような、人間への愛を感じる、そんな映画でした。
『おろかもの』(96分/日本/2019年)
英題:Me & My Brother’s Mistress
公開:2020年11月20日
配給:MAP+Cinemago
劇場:テアトル新宿ほか全国にて順次公開
監督:芳賀俊/鈴木祥
脚本:沼田真隆
音楽:柴山明史
主題歌:円庭鈴子「kaleidoscope」
出演:笠松七海/村田唯/イワゴウサトシ/猫目はち/葉媚/広木健太/林田沙希絵/南久松真奈
Official Website:https://mikata-ent.com/movie/635/
グラッソ(GRASSOC) (2018-08-03T00:00:01Z)