【映画レビュー】ハッピー・バースデー 家族のいる時間 / Fete de famille

“家族のお祝い”を意味する“Fete de famille”という原題を持つ映画『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』
『よりよき人生』セドリック・カーン監督が、大女優カトリーヌ・ドヌーヴを主演に迎えて製作したある家族の物語です。

中年にさしかかった三人のきょうだいとその家族たちが久しぶりに実家に集まった、70歳の母親・アンドレアの誕生日。
離れている時にはなんとなくごまかしたり考えずにいた“家族の問題”が、ごまかしきれずに露わになっていくのです。

家族にはそれぞれ物語があり、抱えた問題があり、でもやっぱり愛もある……。
そんなことを感じさせてくれる、素敵な映画でした。

<STORY>
フランス南西部にある自然に囲まれた邸宅。母アンドレアの70歳の誕生日に、長男のヴァンサンが妻と二人の息子を連れてやってきた。次男のロマンは恋人のロジータを連れてくる。アンドレアの夫・ジャンと孫娘のエマ、久しぶりの一家揃ってのお祝いだ。そこにアメリカで結婚生活を送る長女のクレールが帰ってきた。突然の彼女の帰還に、家族たちは戸惑いを隠せない。クレールの娘のエマは反発し、クレールは情緒不安定になっていく。

<解説>
母親の誕生日という1日にスポットを当て、家族が長年暮らしてきた家を舞台に、まるで演劇のように物語が進んで行く本作。
フランス古典演劇における「三一致の法則」のように単一の場(家)、単一の時(誕生日の1日)、単一の筋(母の誕生日に関連するストーリー)で物語が進む、三幕構成の演劇のような映画です。

経済的にも順調でしっかり者の妻とわんぱくな二人の息子を育てる長男・ヴァンサン。何事にもきっちりしており、家族にも現実的で厳しい意見を述べていきます。
娘のエマを実家に預け、アメリカで結婚生活を送っていた長女・クレール。境界性パーソナリティ障害と思われる、精神的に不安定な女性です。
映画監督を目指してパリで暮らしている三男のロマン。監督としてなかなか芽が出ないものの、フラフラしながら生きています。実家でのできごとをドキュメンタリー映画にしようとカメラを持ち込んでいます。

きょうだいそれぞれに事情があり、それぞれに向ける複雑な感情のもつれがあり、でも数十年にわたる歴史と愛情がある……。
その歴史を感じさせるのが、2曲の楽曲です。フランソワーズ・アルディ「Mon amie la rose」とムルージの「L’Amour, l’amour, l’amour」

聞けば、一緒に声を揃えて歌うことができる。
それこそが、その曲を一緒に聞いていた、時間の積み重ねの証なのです。

そんな家族の歴史と愛情の中心にいるのが、70歳を迎えた母親のアンドレア。彼女は夫のジャン、3人の子どもたち、親代わりに育てている孫娘のエマとそのボーイフレンドのジュリアン、ヴァンサンの妻のマリーと二人の孫息子、ロマンの恋人のロジータと、彼女の家にやってきたすべての人に愛情と敬意を持って接しています。
その姿は、まさにゴッドマザー。このゴッドマザーをカトリーヌ・ドヌーヴが軽やかに演じています。

そして、三人のきょうだいを演じるのはセドリック・カーン(ヴァンサン)とエマニュエル・ベルコ(クレール)とヴァンサン・マケーニュ(ロマン)という、それぞれに映画監督と俳優という顔を持つ才能あふれる三人。
彼らのエキセントリックさと力強さが、一家の物語をぐんぐんと推進していくのです。

 
限られた舞台、限られた時間、限られた登場人物。そんなシチュエーションに、家族の問題が凝縮し、爆発し、収束していく。
これは、根底に愛と理解があるからこそ成立する、家族の試練の物語なのです。

 
『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』(101分/フランス/2019年)
原題:Fete de famille
英題:Happy Birthday
公開:2021年1月8日
配給:彩プロ/東京テアトル/STAR CHANNEL MOVIES
劇場:YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開
監督・出演:セドリック・カーン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴエマニュエル・ベルコヴァンサン・マケーニュ/レティシア・コロンバニ/ルアナ・バイラミ
Official Website:http://happy-birthday-movie.com/

 

Fête de Famille
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posted with AmaQuick at 2020.12.20
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