【本】幽談 / 京極夏彦

幽談 (幽BOOKS)

「百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)」などでおなじみの作家・京極夏彦の短編小説集「幽談」を読みました。

はっきり姿を現さないけれど、何か“こわいもの”が暗闇の中にいる…。

そんな、人間が持つ根源的な恐怖を描いた8編の短編小説が収録されています。

 

STORY

七年前、妻と一緒に汽船に乗ってきた温泉宿に、再び泊まりに来た男。今は妻とも離婚し、たったひとりだ。七年前に泊まった部屋に再び泊まり、男はじっと庭を見つめる。七年前から、妻との間はうまくいっていなかった。そして、この旅館での宿泊をきっかけに、妻への興味を一切失ってしまったのだ。そして、旅行から三年後に別居、さらにその一年後に離婚した。そのきっかけとなった旅館の庭で、男はふたたびあるものを掘り出す…。

感想

本書には、明らかな“幽霊”は登場しません。
(いや…ひとつだけするかな…。ベッドの下の、大きな顔が)

登場するのは、幽霊というよりも、得体のしれない、何かわからないモノ。

何かわかってしまえば怖くないのかもしれないけれど、それが何かがわからないから怖い…。
でも、わからないからこそ惹かれる。
見るのが怖いからこそ、見てしまう。
そんな“怖さ”って、確かにありますよね。

得体のしれないモノに出会い、こわいのだけれど惹かれてしまう。そして、そのモノのことを考えているうちに、自分が何なのかがわからなくなってしまう。
この物語には、そんな人間たちが描かれているのです。

読んでいて思い出したのは、「百鬼夜行シリーズ」の登場人物・関口巽。
彼は、考えても意味がない、答えが出ないことをぐるぐるぐるぐる考えて、神経衰弱にかかったりしますが、本書の登場人物たちは、まさにそんな感じなのです。

でも、本書には京極堂は出てこない。だから、登場人物たちは自らがつくりだした闇の中でぐるぐる回り続けているのです。
“憑物落とし”って、やっぱり必要なのですね。。。

そうそう、私は夜寝るとき、頭のてっぺんから足の先まで、全部布団で覆い隠さないといやなたちなのですが、短編「成人」の中で、私がそう思っている理由とまさに同じことが書いてあって、ちょっとうれしくなりました。

何かさ、肌を露出してるのが厭な瞬間ってあるでしょ。別に何がどうなる訳でもないんだけど、外界と直接触れ合っているのが厭だ、みたいな。(短編「成人」より)

まさしく! 夜の闇と直接触れ合うのが怖くて、全身をすっぽり覆い隠さないと眠れなかった私としては、この部分を読んで、ちょっとうれしくなったのでした。

大極宮
公式HP:http://www.osawa-office.co.jp/

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