【本】淀川長治 映画のある限り百年二百年でも / 淀川長治
私の敬愛する映画解説者・淀川長治のエッセイを集めた本「淀川長治 映画のある限り百年二百年でも」を読みました。
本書は、様々な雑誌や書籍に発表された淀川氏のエッセイを、下記の5つのテーマから集めたもの。
(1) サヨナラおじさん
(2) 映画のあるかぎり百年二百年でも
(3) 感動の日々を
(4) 母ひとり子ひとり
(5) 自由に生きて自由に死にたい
映画を初めて観た幼い頃から、映画にハマって映画業界に入っていくまで、淀川氏の母への想い、淀川氏の死への想いなどを知ることができます。
4歳で映画に出会い、10歳で映画に溺れ、16歳でこれと生涯を共にと決意し、89歳で亡くなる前日まで映画を見続けていた淀川氏の映画に対する思いは、本当に深いものです。
同じテーマで語っている文章を集めている分、同じ内容が被っていることもありますが、何度も語っているということは、それだけそのことに強い想いを持っておられるということでしょう。
本書の中で淀川氏は、人生の中で大事にしているという3つのスローガンを挙げておられます。
Welcome trouble.
(苦労来たれ、苦労歓迎)
Welcome stranger.
(他人歓迎)
I never met a man I did’nt like.
(私はかつてまだ、きらいな人に会ったことがない)
淀川氏は、映画を観ている時にこれらの言葉に出会い、走ってトイレに行って忘れないようにメモったそうです。
うーん、いい言葉だなぁと思っていたのですが、Wikipedia の中でこんな記述を見つけてしまいました。(2010,06,11現在)
この「友の会」には以下の3つのスローガンがあり、淀川も著書内で「自分の信条」として書いていた。だが晩年、「ぼくがモットーにしてた三か条なんだけれど、実は大嘘なの。ぼくは年中、三か条に反する生き方をしていた」と弟子に打ち明けた。 (佐藤有一『わが師淀川長治との五十年』(清流出版)より)
「おいおい」と思わず突っ込みたくなりますが、なかなかそうできないからこそ、自分自身への戒めとしてスローガンにしていたということも言えるのかも。
なかなかスローガンが実行できず、「実は大嘘なの」なんて弟子にこそっと打ち明ける淀川さん、可愛すぎます。
そして、もうひとつ、「その通り!」と思ったのが、淀川さんの映画に対する想いです。
「どんなくだらない映画でも絶対いいところがある。それを拾ってみんなに説明するのが私の使命」
「どの映画見てもどの映画見ても、プラスになるの。どんなにつまらない映画でも、見るとなにかは教えられる。」
私も、このブログを書いていて、映画をいろいろ紹介していますが、なるべく心がけているのは「映画のよいところを紹介する」ということ。
「つまんない。。。」「しょうもない。。。」と思ったりすることも実はよくありますが、なるべくならその映画を切って捨てるのではなく、「ファッションがみどころ」とか、「アクションがとにかくすごい」とか、よいところを見つけて紹介したいと思っています。
「クソ映画」とか「ゴミ映画」とか、辛口の方が読者には受けるのかもしれないですが、その映画を作り、その役を演じた人にとっては、必ず何かしらの思いがあるはずで、その思いを観客に伝える邪魔はしたくないのです。
自分がその映画を面白いと思えないのは、自分がまだ成長していなかったり、もしくはそれを面白いと感じる段階を過ぎてしまっているだけで、それを面白いと感じた人がいるからこそ、映画作品として公開にまでこぎつけたんだろうと思うので。。。
まあ、そんなこんなで、私など足元にも及びませんが、映画を紹介する大先輩の本を読んで、ちょっと最近だらけていた心を入れ替えたのでした。
私が試写室に出入りを始めたのは2001年頃なので、淀川氏の姿をお見かけしたことは一度もないのですが、一度くらいはご挨拶させていただきたかったです。。。
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