【本】更年期少女 / 真梨幸子

更年期少女

松苗あけみのカバーイラストが印象的だった小説「更年期少女」を読みました。
読み終わってから気付いたのですが、この作品、「殺人鬼フジコの衝動」の作者・真梨幸子の作品だったのですね…。

どうりで、「殺人鬼フジコの衝動」で感じたのと同じような、すっきりしない感じを感じたのにも納得です。

なんというか、“設定ありき”“企画ありき”という感じで、登場人物たちが生きて動いている感じがしないのですよね。
なんとなく、「作者の思いついた登場人物たちが、作者の都合良く事件を起こしている」という感じで。
まあ、小説というのはすべからく作者の頭の中で思いついたものであることには変わりはないと思うのですが、この作品は、なんとなく最後に空しさが残るのです。

読者が読みたいのは“意外なオチ”や“斬新な展開”ではなくて、“生きた物語”だと思うのですが…。

<STORY>
1970年代に「少女ジュリエット」誌上で連載されていた少女漫画「青い瞳のジャンヌ」。この漫画は衝撃的なラストを迎え、作者・秋月美有里は姿を消す。2000年代に入っても、この「青い瞳のジャンヌ」は当時のファンたちから熱狂的に支持され、「青い伝説」というファンクラブも健在だった。このファンクラブは“青い六人会”という6人の幹事スタッフによって運営されている。彼女たちはミレーユ、マルグリットなどと呼び合い、食事会などを行っていた。

<解説>
小学生、中学生の頃に夢中になっていた少女漫画「青い瞳のジャンヌ」を愛し、ファンクラブを運営し、会報誌を作ったり、二次創作をしたりしている中年女性たちが巻き起こす悲劇を描いた本作。

この「青い瞳のジャンヌ」は、多分「ベルサイユのばら」的なフランスを舞台とした壮大な歴史ロマン。
この漫画に憧れ、フランスっぽいひらひらとしたドレスを身に着け、フレンチレストランに集合して「マルグリッドさん、いやですわ」「エミリーさん、かわいらしくってよ」「ミレーユさん、どうなさって?」などと会話する中年女性たちの姿は、想像するだに、イタい。
しかも、集合する時はみんな着飾り、格好をつけてはいるものの、私生活はそれぞれ、夫との不仲、ヒモ夫からの暴力、生活保護、親の介護をすることになった無収入のパラサイトシングルなどという問題を抱えていて…。

日々の生活の苦労を忘れ、唯一の息抜きである“青い六人会”にも、実は絶対的なヒエラルキーが存在し、そこでも妬みや嫉妬が渦巻いているのです。

なんだか、彼女たちが生きる世界には、救いがありません。
みんながみんな、自縄自縛で自家薬籠中になっている感じ。
その中で起こる悲劇の数々は、いたいたしくも滑稽です。

その滑稽さをもっとリアルに描き、深くえぐっていったならば、「中年女性の心情に迫った、痛々しくもリアリティのある物語」になったかもしれません。
でも、作者はその方向を選ばず、奇をてらったラストを用意しています。
そのラスト故に、この作品はリアリティのない、絵空事となってしまっているように思います。

なんだかなー。まあ、作者がそれでいいんなら、いいのかもしれないですけど。
私が読みたいのは、こんな絵空事ではありません。

【関連作レビュー】
【本】殺人鬼フジコの衝動 / 真梨幸子:http://c-movie.jp/book/fujiko/
 

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