【本】プレシャス / サファイア

プレシャス (河出文庫)

映画『プレシャス』の原作小説、サファイアの「プレシャス」(原題:「Push: A Novel」「プッシュ」)を読みました。

母国語の英語ですらキチンと読み書きのできないクレアリース・プレシャス・ジョーンズが、代替学校に通い、ひとりの教師に出会ったことにより、文字を知り、教育を受け、成長していく物語。

プレシャスの語りによって物語が展開していくのですが、プレシャスの語り口の変化により、彼女が貪欲に知識を吸収し、知能が成長していくのを知ることができます。
(小説「アルジャーノンに花束を」や、ゲーム「バイオハザード」のゾンビ化していく研究員の日記のように…)

<STORY>
ニューヨーク・ハーレムに暮らす16歳の黒人少女、クレアリース・プレシャス・ジョーンズは、妊娠しているせいで中学校を退学になり、代替学校に通い始める。教師のミズ・レインは文字を知らなかったプレシャスに文字を教え、自分の過去を日誌に記すように教える。実の両親から性的虐待を受け、実の父親の子どもを二度も妊娠し、これまで社会から目を向けて来られなかったプレシャスは、日誌を書くことで自我に目覚め、成長していく…。

<感想>
映画『プレシャス』の原作と言うことで、映画を観た後でこの本を読みました。
やはり、プレシャスの言葉で物語が綴られている分、映画よりプレシャスの内面の変化や成長がわかりやすいです。

汚いスラングばかり使っていたプレシャスが、文字を覚え、少しずつ正しくきれいな言葉を使うようになります。
つたない間違った文法でなんとか綴っている文章から、どんどんとスペルミスが減っていきます。
自分のことしか考えていなかった彼女が、自分の子どもである長男・ちびモンゴや次男・アブドゥルのことを考えて生きるようになります。
善悪の観念すらも教えられず、社会性も身につけて来なかった彼女が、“盗みは悪いこと”だと知り、人と相対する時に、自分を抑えることを知るようになります。

映画では、映像が際立つ分、どうしても“実の両親による性的虐待”がテーマと思われがちだと思います。
しかし、本書を読めば、そういった不幸な子どもたちへの教育の大切さ、自分で考えることを身につけることの大切さ、自立支援の大切さなどを、筆者が訴えていることがわかります。
代替学校の教師が文字を教え、日誌を書くことを教え、彼女の存在を強く肯定しただけで、プレシャスは大きく変化するのですから。

自分をを「プッシュ」してくれる人との出会いで、彼女は自分の人生を「プッシュ」(踏ん張る/力む/いきむ)できるようになるのです。

本書を読んでいて、印象に残ったのは、プレシャスのこの言葉。

ミズ・レインの話だと、『カラー・パープル』の結末がおとぎ話みたいだって、けちつける人たちいるらしい。あたし、あんなこと、ほんとにあると思うよ。人生はときどき、いいほうにも動くんだ。ミズ・レインは『カラー・パープル』大すきだけど、リアリズムもだいじだって言う。(中略)“リアリズム”ってなんだか知らないけど、現実(リアリティ)なら知ってるし、それは、あたしに言わせれば、ろくでもないもんなんだ。

“事実は小説よりも奇なり”と言うけれど、そんなろくでもないリアリティを生きてきたプレシャスが、それでもまだ人生を信じているということに、人間の持つパワーを感じたのでした。

■映画『プレシャス』レビュー:http://c-movie.jp/review/precious/

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