【本】かぶいて候 / 隆慶一郎
久しぶりに隆慶一郎の時代小説を読みました。
表題の小説「かぶいて候」には、自らの信義に沿って生きる男・水野成貞が、かぶき者として生きる第一歩を踏み出したところまでが描かれています。
それにしても、昔の時代の話なのに、語り口がしっかりしていてなんて読みやすい文章なのでしょう。
表現が難しいであろう剣戟シーンなども、わかりやすくて剣客たちの動きが目に浮かぶようです。
それにしても、隆慶一郎の描く男性って、なんでこんなにかっこいいんだろう…。ほんとに惚れます。
<STORY>
徳川家光の小姓となった水野成貞。任務を果たすため武術を学んだ彼は、ある日、宴席での家光暗殺を阻止する。しかし、首謀者の正体を突き止めるため、暗殺者の手当てをしたことで家光の不興を買ってしまう。成貞はそんな家光を心の中で軽んじながら、独自で暗殺の首謀者を突き止めた。成貞に正体を知られたことに気付いた首謀者は、成貞の屋敷を襲うが、そこには、成貞とその家臣3人が、準備万端、待ち構えていた…。
<感想>
“かぶき者”と言えば、太平の世にありあまるパワーを持てあまし、派手な服装と奇矯な振る舞いで自己を顕示する若者、というイメージ。
しかし、この物語の主人公、水野成貞は違います。
彼は、自らの信念を貫いて行動し、その生きざまを貫くためにかぶき者になるのです。
「今日よりかぶくことにした。」って、なんてかっこいい言葉なのでしょう。
隆慶一郎はもともと脚本家を生業としていた人で、そのせいなのか、セリフのひとつひとつにリズムと華やかさがありますね。
でも、この小説で描かれているのは、成貞がかぶき者になったところまで。
著者が亡くなったため、かぶき者になって以降の成貞については、描かれていないのです。
それがホントに残念。。。
かぶきまくった成貞の姿を、もっともっと見たかったと思います。
本書「かぶいて候」には、表題作「かぶいて候」以外に、幕末を描いた短編小説「異説 猿ケ辻の変」、エッセイ「わが幻の吉原」、対談「日本史逆転再逆転」などが含まれています。
「わが幻の吉原」では、私の大好きな小説「吉原御免状」や、「影武者徳川家康」の誕生秘話が明かされていて、これはファンにはうれしい!
かなりお得感のある一冊でした。
久しぶりに時代小説を読みましたが、やっぱり面白いな…。
ちょっと、他の作品もまた読んでみようと思います。
集英社 (1993-12-15T00:00:01Z)
¥440