キッズ・リターン 再会の時
ものすごーく棒読みの金子賢と安藤政信が、自転車に乗って青春をムダに消費していく1996年の北野武監督作『キッズ・リターン』。
「俺たち、もう終わっちゃったのかなあ」「バカヤロウ、まだ始まっちゃいねえよ」というセリフに、私は希望よりも悲哀を感じてしまいました。
若さゆえ、ムダな自信だけを持っているものの、決して彼らはそこから這い上がれないのだろうな…。
地道に練習を積み重ねて来た同級生の漫才コンビは、少しずつステップアップしていっているけれど、無根拠な自信のみでステップを踏まずに来ているマサルや、自分の意見もなくただ流されるままに頷いているシンジには、将来はないのだろうな…と。
そんなシンジとマサルの10年後が、2013年の今、『キッズ・リターン』で助監督を務めていた清水浩監督の手で、新たに映画化されました。
それがこの映画、『キッズ・リターン 再会の時』です。
<STORY>
かつての悪友・シンジとマサルは、高校を卒業して10年、ほとんど会っていなかった。かつて新人王をとったボクサーのシンジだが、今は格上の相手の咬ませ犬ばかりさせられ、引退を決意していた。その頃、マサルが服役を終えて出所してくる。交通整理のアルバイトをしていたシンジは、偶然通りかかったマサルと再会。彼に応援され、シンジはボクサーとして再起を図る。マサルは再びヤクザとなるが、時代はすっかり変わっていた…。
<Cheeseの解説>
『キッズ・リターン』の“その後”を描いた本作。
かつて安藤政信が演じたシンジを平岡祐太が、金子賢が演じたマサルを三浦貴大が演じています。
監督も違うし、もうまったく別物と言ってもいいでしょう。
前作にあった突き放したような諦念や、愛情のあるような透徹した眼差しもそこにはなく、あるのはウェットな同情のみ、と言う感じ。
そもそも1996年に“終わっちゃっている”彼らの物語の10年後を描くことに意味があるのでしょうか。。。
シンジとマサルは、ただ、あがいているだけのようにしか見えませんでした。
彼らの人生は18歳までに完全燃焼してしまっており、その10年後の物語は、燃えカスのようなものでしかないように思います。
平岡祐太と三浦貴大は頑張っていると思うのですが、観客はどうしても安藤政信と金子賢と比べてしまって、「なんか違う」と思ってしまうことでしょう。
監督とキャストがそのままであるならばともかく、まったく新たな布陣で“その後の物語”を作る必要があったのか…。
2013年の現在だからこそ、という要素も特に見受けられなかったし、なぜ“今”この物語を作ったのだろう…。
なんだか、いろいろと腑に落ちない一作でした。
ただ、絶対にこういった批判が来るであろう、名作に挑んだスタッフ、キャストの心意気には、敬意を表したいと思います。
『キッズ・リターン 再会の時』(107分/日本/2013年)
公開:2013年10月12日
配給:東京テアトル/オフィス北野
劇場:全国にて
原案:ビートたけし
監督:清水浩
出演:平岡祐太/三浦貴大/倉科カナ/中尾明慶/市川しんぺー/小倉久寛/池内博之/杉本哲太/ベンガル
公式HP:http://www.kidsreturn-saikai.com
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