【映画レビュー】007 スペクター ／ Spectre

“007”ことジェームズ・ボンドは、かつての上司・Mの遺言でスキアラという男を殺害し、その男の指から“スペクター”という悪の組織のマークの入った指輪を抜き取る。スペクターの会議に潜入したボンドは、スペクターの首領・オーベルハウザーから追われるも、辛くも逃げ切った。そしてスペクターの秘密を知る仇敵のMr.ホワイトから娘を守るよう遺言を託されたボンドは、ホワイトの娘・マドレーヌを訪ねて彼女の勤務先を訪れるが…。

本作『007 スペクター』の原題は“Spectre”。
この“Spectre”は、古くからのボンドの宿敵である、悪の組織です。
この“Spectre”は“Special Executive for Counter-intelligence, Terrorism, Revenge and Extoetion”の略であり、“対敵情報、テロ、復讐、強要のための特別機関”を意味します。

この悪の組織スペクターは1967年の『007は二度死ぬ』、1969年の『女王陛下の007』、1971年の『007／ダイヤモンドは永遠に』ほか、多くの007作品に登場し、その首領エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドは、宿敵としてボンドの前に立ちふさがっていたのでした。

そして本作『007 スペクター』。
『007 スカイフォール』で自らの過去と対峙したボンドの前に、スカイフォールに残っていたある写真とともに、スペクターという組織が登場します。
つまり、この“スペクター”は、ジェームズ・ボンド、そして「007」シリーズにとって、二重の意味で過去の因縁の象徴なのです。

『007 スペクター』では、クリストフ・ヴァルツがこの悪の組織・スペクターの首領・オーベルハウザーを演じています。
この彼の演技、存在感、そして小物や造型の数々、オールドファンにとっては、かなりうれしいところなのではないでしょうか。

そして、本作でボンド・ガールを演じるのは、レア・セドゥとモニカ・ベルッチ。

ダニエル・クレイグ版ボンドの集大成と言える本作では、これまでの3作でボンドを翻弄する存在だった敵役、ミスター・ホワイトの娘・マドレーヌが、ボンド・ガールとして重要な役で登場します。
そのマドレーヌを演じるのは、レア・セドゥ。
ちょっと酔っ払ってボンドに絡んでみせるなど、意図しないセクシーさがなんとも魅力的です。

彼女は、これまでのボンドと、ある意味、同じ過去に苦しめられてきた存在。
そんな彼女がボンドにどういう影響を与えるのか…。
違う立場にありながら、同じ過去を共有できる二人だかららこそ共鳴できるものがあるのでしょう。

エヴァ・グリーン演じるヴェスパー・リンド、ジュディ・デンチ演じるM、敬愛する女性たちに先立たれたボンドの心を癒し、人間同士として助け合えるのは、同じ過去を共有できる彼女だけなのかもしれません。。。