【映画レビュー】WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~
ダメダメな若者の成長をゆる~く描かせたら天下一品の矢口史靖監督。
本作『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』でも見事にやってくれました。
この作品で矢口監督が描くのは、なんと、林業。
大学受験も失敗し、彼女にもフラレ、パンフレットに載っていた女の子目当てに軽い気持ちで1年間の林業研修プログラムに参加した若者の成長を、独特の空気感でゆるっと映像化しています。
軟弱都会っ子である勇気役の染谷将太、ナチュラル・ボーン・山男のヨキを演じた伊藤英明のはまりっぷりも素晴らしく。
“林業”という、日本人の生活の根幹となるものを、明るく楽しく教えてくれる、なあなあな感じの一作です。
<STORY>
大学受験に失敗し、やりたいこともなかった18歳の平野勇気は、パンフレットに乗っていた美女に惹かれ、三重県で行われる1年間の林業研修プログラムに参加。携帯電話の電波も入らない山奥の神去村で、先輩・飯田ヨキの家で暮らすことになる。ヨキは、都会育ちの勇気には信じられないほど野性的な、生まれながらの山の男だった。林業の大変さに音を上げた勇気は逃げ出そうとするが、パンフレットに載っていた美女・石井直紀に再会し…。
<解説>
三浦しをんの小説「神去なあなあ日常」を矢口史靖監督が映画化した本作。
染谷将太演じる都会育ちの勇気が、林業をしながら肉体的・精神的に成長していく様を描いています。
勇気が一年間を過ごすことになった神去村は、スーパーまで行くのにも車で二時間もかかるようなド田舎。
携帯の電波ももちろん通じません。
勇気にとっては耐えられないような環境ですが、神去村の人びとには、そんな生活があたりまえ。
おばあちゃんたちは道ばたで日がな一日おしゃべりをし、女たちは賑やかに夫と子どもを送り出し、男たちは朝から山に入って林業に精を出しているのです。
勇気が世話になることになった先輩・ヨキは、そんな神去村で生まれ育った男。
走っているトラックに飛び乗るのも朝飯前という高い身体能力、拾った鹿の死体を持ち帰って食卓に乗せるというワイルドさ、妻のみきだけでなくニューヨークの女も同時に愛せるという絶倫ぶりのナチュラル・ボーン・山男なのです。
そんなヨキの家で、隙あらばヨキの子を身ごもろうと頑張るみき、おばあちゃんのしげさんと共に、勇気は神去村の生活を送ることになるのでした。
そんな勇気が惚れたのが、長澤まさみ演じる直紀。
神去村で生まれ育った直紀は、かつて都会の男と恋愛し、心に傷を負っています。
そんなこともあり、都会から軽い気持ちで来た勇気を批判的な目で見つつ、神去村での生活を送っているのです。
そんな神去村では、ごく自然に山の神様への信仰が根付いています。
山に入る前には手を合わせ、山の各所にはお地蔵様がおいでになり、季節ごとに髪に感謝を捧げる祭りをする。
そんな昔ながらの土着の“自然の神への感謝と畏れ”を、さりげなくフィルムに収めているのです。
そのクライマックスとなるのが、大山祇祭(オオヤマヅミサイ)。
儀式として、褌一丁の男たちが集まって巨大なご神木を切り倒し、その神木を山の斜面から滑り落とすのですが、その先に待っているのは、女性のある部分を模した巨大なご神体。
そして、事がなった暁には、女性たちが子宝を願う女性たちが我先にとご神木に群がる、という。。。
この映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』では、リアルな生活に根付いた土着の“山岳信仰”、“男根信仰”などを、ごく自然に描いています。
長澤まさみ、優香、西田尚美ら演じる神去村の女性たちは、原始の明るさを持って子どもを育て、伊藤英明、マキタスポーツ、光石研ら演じる村の男たちは、自分の肉体を使って愛する人たちの生活を支えていく。
「これこそが昔ながらの日本の生活なんだなあ」と、田舎育ちの私などは、楽しく受入れてしまいます。
ちょっとおバカだけれど素直な青年の成長を描いたこの映画。
ゆるく見せつつも、古き時代の日本の暮らしを思い起こさせる、昔ながらの人間ドラマなのでした。
『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』(116分/日本/2014年)
公開:2014年5月10日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:三浦しをん
監督・脚本:矢口史靖
出演:染谷将太/長澤まさみ/伊藤英明/優香/西田尚美/マキタスポーツ/有福正志/近藤芳正/光石研/柄本明
公式HP:http://www.woodjob.jp/
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