【映画レビュー】鵞鳥湖の夜 / 南方車站的聚会
新型コロナウィルスの発祥地として、世界に名を馳せた中国中部の都市・武漢。
今やあまりよくないイメージとなってしまいましたが、“百湖の街”とも呼ばれる風光明媚な湖沼地帯でもあります。
この武漢でロケを行い、その魅惑的なビジュアルで鮮烈な印象を残す映画が、この『鵞鳥湖の夜』です。
STORY
再開発が進む中国南部の中で、リゾート地・鵞鳥湖の周辺だけは取り残されていた。刑務所から出所してきたチョウはバイクの窃盗団に戻る。しかし、対立する組織との抗争中に、誤って警官を射殺し、指名手配になってしまう。自らに30万元の報奨金がかけられたと知ったチョウは、その金を妻子に遺したいと願う。そんな時、水辺で娼婦として生活を立てている水浴嬢のアイアイが妻の代理として現れる。チョウはアイアイと行動を共にするが……。
解説
対立する組織から狙われ、さらに警察官を誤って殺してしまったことから指名手配されてしまった裏社会に生きる男・チョウと、彼の前に突然現れた謎の女・アイアイ。
この二人が、チョウを逮捕しようと追う警察や、チョウに掛けられた30万元(日本円にして約400万円/2012年当時)の報奨金を目当てにチョウを追う対立組織の猫目・猫耳兄弟から逃げながら過ごす道行きを描く本作。
舞台となる鵞鳥湖周辺は、“城中村”という中国の急激な都市化の中で周辺を高層ビルに囲まれ、“都市の中の村落”となった地域。都会のエアスポットのような、発展から取り残された地域なのです。
湖も多く、リゾート地でもあるこの地域には、“水浴嬢(陪泳女)”と呼ばれる娼婦が多く存在しています。
アイアイは、この水浴嬢として生計を立てる女性です。
逃亡する二人を描く本作では、夜のシーンが多くなっています。
濡れた地面に映る毒々しいネオンの光や、極彩色のライト、住民たちが履くソールが蛍光色に発光するスニーカー、夜の動物園、妖しい見世物小屋……。
強烈なビジュアルが続く本作では、独特の世界観で観客を鵞鳥湖の世界に引き込んでいきます。
ビニール傘に飛び散る血しぶきさえ、魅惑的に見えるのです……。
この数々のビジュアルを見るだけで、ディアオ・イーナンの才能に刮目すべきことがわかるはず。
すぐれたサスペンスでありながら、映像詩としても素晴らしい一作なのです。
『パラサイト 半地下の家族』、『在りし日の歌』を抑えて、アジア映画批評家協会賞最優秀監督賞を受賞したのも納得のこの作品。
静かな熱気と情熱を感じられる、ディアオ・イーナンの才能がほとばしった必見の映画と言えるでしょう。
作品情報
『鵞鳥湖の夜』(111分/中国=フランス/2019年)
原題:南方車站的聚会
英題:The Wild Goose Lake
公開:2020年9月25日
配給:ブロードメディア・スタジオ
劇場:新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて
監督・脚本:ディアオ・イーナン
出演:フー・ゴー/グイ・ルンメイ/リャオ・ファン/レジーナ・ワン
Official Website:http://wildgoose-movie.com/
関連商品
アメイジングD.C. (2021-07-02T00:00:01Z)
¥8,448 (コレクター商品)
アメイジングD.C. (2021-07-02T00:00:01Z)
¥6,904 (コレクター商品)
映画チラシ ()
¥800
ポニーキャニオン (2015-05-20T00:00:01Z)
¥29,800
バップ (2020-07-22T00:00:01Z)
¥6,627
紀伊國屋書店 (2020-10-30T00:00:01Z)
¥3,927