【映画レビュー】水曜日のエミリア ／ Love and Other Impossible Pursuits

不倫、妊娠、略奪婚！
実子の突然死、継子との不仲、前妻との確執!!

言葉にしてしまうと、なんだかセンセーショナルで、ワイドショー的な題材を描いているこの映画『水曜日のエミリア』。

ただ、内容自体はそんなに過激で下世話なものではなく、“普通の幸せ”を求めて、自分なりに生きる個人、そしてその個人たちが集まってできる家族の姿を描いています。

個人個人の“幸せを選択する自由”が保証され、幸せの形が多様になってきた現代。
そんな時代を自分なりに懸命に生きる女性・エミリアを、ナタリー・ポートマン自身が演じています。

今作の製作総指揮も手がけているナタリー、本当に今ノリにノッてますねー。
まあ、この作品自体は、アカデミー賞主演女優賞を受賞した『ブラック・スワン』より前の、2009年製作ではあるのですが…。

＜STORY＞
NYで働く新人弁護士のエミリアは、ボスのジャックに一目惚れ。やがて恋愛関係となるが、ジャックには妻子がいた。しかし、エミリアは妊娠し、ジャックと結婚する。幸せな生活が送れると思っていたのだが、やがて生まれてきた娘・イザベルは生後すぐに突然死してしまう。そのショックから立ち直れないエミリアは、週の半分を一緒に暮らす、ジャックと前妻の息子・ウィリアムともうまく関係が築けず、ギクシャクした生活を送っていた。

21世紀を生きる私たち。一人一人の生き方は、本当に多様になっていると思います。
誰と恋愛しようと自由だし、直接他人に迷惑をかけていなければ、責められることもない。
好きな仕事をすればよいし、したくない仕事ならば選ばなければよい。

しかし、そうやって選択の幅が広まった現代、自由を獲得してしまった今だからこそ、“幸せ”の追求は難しくなってきたように思います。

本作の主人公・エミリアの人生は、まさにそんな感じ。

法律家の家庭に生まれ、自身も弁護士になったエミリアは、就職した弁護士事務所のボスに一目惚れ。
相手に家庭があることにも構わずにアタックし、恋愛関係に発展、妊娠して略奪に成功します。

そうやって、自分の欲望を忠実に実行して幸せを手にしたはいいけれど、代償も大きいものでした。
妻子ある相手と結婚したということは、自分を憎む前妻や、自分のせいで両親と一緒に暮らせなくなった子どもとも付き合う必要があるということ。

エミリアが好きなように行動してキャロリンの家庭を壊した結果、キャロリンはエミリアに対して冷酷な対応をします。
ウィリアムも、素直にエミリアになつこうとしません。

キャロリンだってウィリアムだって、本当は悪い人間ではないけれど、エミリアに対してやさしくなれない部分があるのは当然のことでもあるでしょう。
でも、根っからの悪人ではないので、エミリアが本当に苦しんでいる時には、手を差し伸べることもあります。

子どもを亡くした哀しみを抱えるエミリアは、家族や友人たちの力を得て、自分なりの方法で再び立ち上がろうとするのですが…。

親の離婚に傷付きつつも、新しい家族を作ろうとするウィリアムを演じたチャーリー・ターハンくんも、とてもよい演技を見せてくれました。
映画『きみがくれた未来』ではザック・エフロンの弟役を演じていた彼、これからの成長が楽しみですね。

この作品は、離婚や再婚が当たり前になり、親子関係が多様化している現在を象徴しているような映画です。
根っからの善人でも根っからの悪人でもない人たちが、結婚や離婚、再婚によって、これまでになかったような新しい“家族”を作って行かなければならない時代の、新しい家族像を描いた本作。

小品ではありますが、家族一人一人の思いが胸に迫ってくる、なかなかの名作だと思います。

そう言えば、この作品はニューヨークを舞台にしています。
この映画の重要な舞台となっているのは、セントラル・パーク。
ニューヨークの人々にとって、セントラルパークはとても身近で、とても重要な場所なのだということが、画面から伝わってくるようでした。