スリーデイズ / The Next Three Days
ハリウッドの暴れ馬(と私が常々思っている)ラッセル・クロウが、名匠ポール・ハギス監督とタッグを組んだ静かなクライム・ムービー『スリーデイズ』。
暴れ馬ではあっても、やはり確かな技術を持った名優であるラッセル・クロウは、本作で妻を愛し、妻のためなら犯罪も辞さない大学教授をシブ~く演じています。
リーアム・ニーソンが密かに登場していたりする点にも注目の、地味に豪華な作品です。
<STORY>
大学教授のジョンは、美しい妻・ララ、幼い息子のルークと幸せな生活を送っていた。しかし、ララが職場の上司を殺した容疑で逮捕され、生活は一変する。現場の証拠はすべてララの犯行であることを示していたが、ジョンはそれを信じられない。3年後、裁判でもララの有罪が決定した時、ジョンの心は決まる。「ララを脱獄させる!」 ジョンは、自宅も売却して資金を作り、脱獄を成功させるため、その後の生活のため、綿密な準備を始める…。
<Cheeseの解説>
妻を愛するがあまり、大胆な犯行計画を立てる男が主人公である本作。
2008年のフランス映画『ラスト3デイズ~すべて彼女のために~』が原案となっています。
脱獄のため、脱獄後の逃亡のため、その後の国外脱出のため、その後の生活のため…。
真面目な一市民だった男が、慣れないながらも徹底的な下調べを行い、綿密に準備をし、そして緻密な計画のもとに脱獄を遂行して行く様子は、面白いのですが、地味と言えば、かなり地味。
この作品が面白くなってくるのは、やはり「脱獄できる期間が残り3日しかない」と男が知ってから。
ここまでは、いろいろと計画を練ってはいましたが、どこかまだ現実感のないものだった脱獄計画が、俄然、現実味を帯びてくるのです。
ラスト・スリー・デイズで、男は計画の仕上げをしなければならなくなったのです。
そして、あるきっかけで、彼は“ポイント・オブ・ノー・リターン”を越えてしまいます。
もう、脱獄計画を実行するしかない、ここで何もしないでいても、自分は捕まってしまう…。
ここからは、本当に気が抜けない、スリリングな展開が始まります。
なんとか妻を連れ出すことには成功するものの、市の中心部を完全封鎖されるまでは15分、高速道路料金所の警察配置までは35分しかない。
そこまでに、一刻も早く街から出なければいけないのです。
男は本当に妻の脱獄を成功させることはできるのか?
妻の脱獄を成功させたとしても、警察の追っ手から、無事に逃げ切ることはできるのか?
そして、妻は本当に上司を殺していないのか?
殺していないならば、なぜ現場の証拠は、妻が犯人だと示しているのか?
これらの疑問が全て解決していくラスト30分は、なんとも見応えがあります。
さすが、映画『クラッシュ』で複雑に絡み合った人間関係を、一本のタペストリーとして織り上げてみせたポール・ハギス監督。
本作でも、ミスリードも含め、主人公、彼の妻、彼の両親、警察といった人間たちのドラマを、ラスト30分に凝縮し、まとめあげています。
序盤は、多少冗長さを感じることもあるかもしれません。
しかし、最後まで観れば、きっと、すべてのピースをあてはめてジグソーパズルを完成させた時のような爽快感を感じることのできる一作だと思います。
別コラム:オトコに見せたいこの映画『スリーデイズ』
『スリーデイズ』(134分/アメリカ/2010年)
原題:The Next Three Days
公開:2011年9月23日
配給:ギャガ
劇場:丸の内ルーブルほか全国にて
製作・監督・脚本:ポール・ハギス
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ラッセル・クロウ/エリザベス・バンクス/ブライアン・デネヒー/レニー・ジェームズ/オリビア・ワイルド/タイ・シンプキンス/ヘレン・ケアリー/リーアム・ニーソン/ダニエル・スターン/RZA/ジェイソン・ベギー/アイシャ・ハインズ
公式HP:http://threedays.gaga.ne.jp/
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(C)2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
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