【映画レビュー】ハート・ロッカー / The Hurt Locker
2010年の第82回アカデミー賞で最多9部門のノミネートを記録し、作品賞・監督賞、最有力候補とも言われている映画『ハート・ロッカー』。
2004年、イラク戦争で爆発物処理という任務に従事する男たちの物語です。
他の軍人に比べ、死亡率が5倍高いという爆発物処理班で、日々、死に直面しながら生きる男たちの心理を、緊迫感あふれる映像で描きだしています。
タイトルとなっている「ハート・ロッカー(THE HURT LOCKER)」とは、傷ついたものを入れるロッカー、つまり死体を収容するロッカーを表しているようです。
実際、冒頭で亡くなった軍曹が、白い大きなロッカーに入れられているシーンがあります。
イラクには、爆発のことを「“ハート・ロッカー”にお前を放り込む」という兵隊用語があるそう。
棺桶に半分足を突っ込んでいるような、爆発物処理班の男たちを表すのに、ぴったりの題名かもしれません。
ある意味、彼は、生きたまま棺桶に入っているとも言えるのかも。
STORY
2004年の夏。イラク駐留米軍・ブラボー中隊の任務明けまで、約40日に迫っていた。爆発物処理班の作業中、大爆発が起き、班長のトンプソン軍曹が死亡してしまう。トンプソンに変わって派遣されてきたのはジェームズ軍曹。技術は高いが型破りなジェームズ軍曹に、部下のJ.T.サンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は戸惑い、反発する。ある日、爆発物処理班の3人は砂漠での戦闘に遭遇し、銃撃戦、そして息詰まる持久戦に突入する…。
解説
この映画は、戦場というのがどういうところなのかを教えてくれます。
戦場というのは、まさしく、命のやり取りをしている所なのですね。
主人公の任務は、爆発物を処理すること。
廃墟だったり、住宅だったり、車だったり、いろいろなところに仕掛けられている爆弾を安全に処理するのが、毎日の仕事なわけです。
時にその爆弾は、人間に仕掛けられていたりもします。
人間爆弾とされた少年の体の中に埋め込まれていたり、善良な家族思いの男の体にむりやりしばりつけられていたり。
そんなふうに様々なところに仕掛けられた爆弾を、自らの命を懸けて処理していきます。
もちろん、安全に処理しきれず、自分の命を散らしてしまったり、他人が爆死していくのを間近で見つめる羽目になったりもします。
そうやって、日々、自らの命を危険にさらしながら任務を果たすというのは、どういう気分なのでしょうか。
その瞬間その瞬間はアドレナリンや脳内麻薬などの作用で乗り切れるのかもしれませんが、後から来る反作用が凄そうな気がします。
私だったら、銃を向けられただけで怖くて絶叫しそうです。
戦場なんて行った日には、緊張に耐え切れないかもしれません。
この映画は、そんな戦場に“自ら志願して戦いに行く”兵士を描いています。
どんな危険に身をさらしたとしても、その危険こそに“自分が今生きていること”を実感し、戦闘時の高揚感や緊張感を求めて生きる…。
その高揚感を感じられない日常の日々には、虚無感しかない。
彼にとって、「戦争は麻薬」なのです。
この映画では、爆発による地面の振動や空気の揺れなどが、4台の手持ちカメラを使用して、鮮明に映し出されています。
砂漠の乾いた空気の中での、爆発の振動。
この振動こそが、彼に“生きている実感”を味わわせているのかもしれません。
作品情報
『ハート・ロッカー』(131分/アメリカ/2008年)
原題:The Hurt Locker
公開:2010年3月6日
配給:ブロードメディア・スタジオ
劇場:TOHOシネマズみゆき座、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて
監督:キャスリン・ビグロー
俳優:ジェレミー・レナー/アンソニー・マッキー/ブライアン・ジェラティ/レイフ・ファインズ/ガイ・ピアース/エヴァンジェリン・リリー
公式HP:http://www.hurtlocker.jp/
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