【映画レビュー】マジック・マイク ／ Magic Mike

アメリカのイケメンの条件はマッチョでムキムキ、オンナはナイスバディーでセクシー。
本当にアメリカというのは、いい意味でも悪い意味でも、ホントにマッチョで“肉体”を重視する国なんだなぁ。。。

筋骨隆々のイケメンたちが半裸のTバック姿で肉体を誇示して踊りまくる映画『マジック・マイク』を観て、なんだか実感してしまいました。

男性ストリップダンサーが、色と金と欲にまみれ、自らが本当に望んでいることに気付いていく過程を描いた本作ですが、日本でおんなじような物語を作るとすると、主人公はやはりホストあたりになるのでしょう。

なんだか、アメリカと日本の“肉体”に対する感覚の違いを実感し、「そりゃアメリカさんと日本人とじゃ、体の作りが違うからね」などとも思ってしまったのでした。
いやー、いいもん見せてもらった。

いくつもの仕事を掛け持ちするマイクは、建設現場でアダムという19歳の青年と出会う。彼に何かを感じたマイクは、アダムをエクスクイジットというクラブに連れて行く。そこはマイク自身が働く、男性ストリップ・クラブだった。マイクはそこで“マジック・マイク”と呼ばれるトップダンサーだったのだ。酔っぱらって倒れたダンサーの代わりに急遽ステージに立ったアダムは、その度胸で女性客を魅了。ダンサーとして雇われることになる…。

18歳から19歳の間、8ヶ月間ほど実際に男性ストリッパーをやっていたチャニング・テイタムが製作・主演を手がけたこの作品。

30歳のスターストリッパー“マジック・マイク”と、19歳の新人ストリッパー“キッド”（アダム）が出会い、“キッド”がストリッパーとして成長していく模様と、“マジック・マイク”が人生の意味に気付いていく模様を描いています。

マイクとキッドが働くお店“エクスクイジット”は、ダラスというオーナーを筆頭に、ケン、ビッグ・ディック・リッチー、ターザン、ティトといった肉体派、ラテン系など様々な色男たちが働くお店。
夜な夜な女性たちを熱狂させ、日々あぶく銭を稼いでいます。

地道に働くよりも簡単に大金が稼げ、しかもやりたい女性とやり放題。
19歳の少年が溺れてしまうのも無理はありません。
しかし、快楽と金の周辺には、欲望と裏切りがつきもの。
そこを見極め、うまくわたっていかないと、いつか足をすくわれてしまう世界なのです。

マイクは、アダムを兄のように見守りつつ、アダムの姉で地に足のついた生活をしているコディと親しくなります。
そして自分が“いろいろ調子のいいことを言っているだけの、何もなしえていない30歳の男性ストリッパー”でしかないこと、そして本当は自分が人生に何を求めているのかということに、気付いていくのでした。

スティーヴン・ソダーバーグが監督を務めるこの作品、底流に流れるのはアメリカの金融や経済に対する警鐘。
さらに、『ガールフレンド・エクスペリエンス』にも共通する投資社会への嫌悪感と、女性に求める癒しを求める“男性”の弱さも描かれています。
それらのテーマを、華やかできらびやかな金と友情と虚飾の世界“男性ストリップ”というモチーフで、上手に隠しているのです。
ストリップショーの舞台は華やかな極彩色、それ以外の日常生活はイエローウォッシュの映像というコントラストも独特の雰囲気。

しかし、この映画で最も印象に残るのは、ナイスバディな男性ストリッパーたちが繰り広げる華やかなショー。
マイクを演じるチャニング・テイタムはもちろん、アダム（キッド）を演じるアレックス・ペティファー、オーナーのダラスを演じるマシュー・マコノヒー、ドラマ「ホワイトカラー」のニール役のマット・ボマー、ドラマ「CSI：マイアミ」のデルコ役のアダム・ロドリゲスなどが、華やかな舞台を見せてくれています。

特に注目なのは、ダラスを演じるマシュー・マコノヒー。
金への執着と店へのこだわり、そしてメンバーたちに対する一種歪んだ愛を見事に演じ、主人公たち以上に場をさらっていくのです。
彼の狂気がかった演技が、この作品をより深いものにしていると言えるでしょう。