【映画レビュー】SING/シング ／ Sing

レディー・ガガにテイラー・スウィフト、きゃりーぱみゅぱみゅからフランク・シナトラ、歌劇「トゥーランドット」まで、新旧の数々の楽曲が使用され、思わず踊り出してしまいたくなってしまうようなアニメーション映画『SING/シング』。

「ミニオンズ」シリーズのイルミネーション・エンターテインメントと『リトル・ランボーズ』のガース・ジェニングス監督がタッグを組んだ、キュートで楽しい一作。
タイトルどおり、“SING（歌）”の持つパワーを最大限に発揮したこの作品、夢を実現させるために一歩踏み出すための勇気を与えてくれるはずです。

赤字続きで倒産寸前の劇場の支配人、バスター・ムーン。彼はなんとか劇場を立て直そうと、歌唱コンテストをプロデュースすることを思いつく。応募してきたのは、子育てに追われるブタの専業主婦・ロジータに、若いゴリラのギャング・ジョニー、パンク・ロッカーを目指すヤマアラシの少女・アッシュ、嘘つきなネズミのマイク、天性のパフォーマー・グンターといった面々。バスターは内気なゾウのミーナの助けを借り、リハーサルを重ねるが…。

リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、タロン・エガートンといったスターたちが見事な美声を聞かせてくれる本作。

一見したところ、ちょっと『ズートピア』に似た既視感もあったりもしますが…、本作はコアラ、ゴリラ、ブタ、ハリネズミ、ネズミ、ゾウといった個性的なキャラクターたちが歌って踊り、見事なパフォーマンスを披露してくれるということで、ちゃんと差別化はなされています。

本作の登場人物、いや、登場動物は、こんな感じ。

子供の頃に見せられた“劇場”を自分で運営し、華やかな舞台でお客さんを楽しませたいと願うコアラ、バスター・ムーン。
自分の歌声には自信があるものの、25匹の子豚や仕事ばかりの夫の世話に追われ、疲れた主婦のブタ、ロジータ。
ギャング・ファミリーの家に生まれ、歌手になりたいという夢と、父親への愛の間で揺れているゴリラの少年・ジョニー。
彼氏と二人でパンクロッカーを目指していたものの、一人だけオーディションに合格したことで彼氏に浮気され、別れてしまった傷心のヤマアラシ・アッシュ。
内気であがり症のため、人前で歌声を披露することができないが、すばらしい声量と実力を秘めたティーンエイジャーのゾウ・ミーナ。
ジャズ・ミュージシャンとしての実力はあるものの、その欲張りで自己中心的、嘘つきな性格が災いして仕事をなくしたストリート・ミュージシャンのネズミ・マイク。
天性の音楽好きで、陽気で楽しいブタのグンター。

彼らは一見、欠点も多く、どこにでもいるような動物たち。
そんな彼らが、歌への思いだけを胸に、立ち上がるのです。

こんな彼らが、自分の夢を解き放ち、自分の実力を開放して、紆余曲折の末にステージに立つ姿を描いています。
彼らは、そんな自分たちの心情にぴったりの歌の数々を披露し、自己を開放していくのです。
彼らは決して一人ではなく、仲間たちがいたからこそできたこと…。
夢の大切さとともに、仲間の大切さ、仲間といることの楽しさなども、一緒に描いているといえるでしょう。

『リトル・ランボーズ』で“映画作り”という夢を持ち、仲間たちとともに映画を作る楽しさや素晴らしさを描いたガース・ジェニングス監督は、本作では“歌”、“ステージ”の楽しさや素晴らしさを見事に描いてくれました。

この作品、オリジナルキャストの英語版もいいのですが、日本語吹替え版もなかなかです。
内村光良や長澤まさみ、山寺宏一などの俳優たちがその見事な歌声を聴かせてくれています。
さらに、声優や俳優ではないミュージシャンのMISIAやスキマスイッチの大橋卓弥なども参加。歌声が素晴らしいのはもちろんですが、ちょっとぎこちなくもありますが、決して悪くはない演技を見せてくれています。
特に、MISIA…。彼女の歌声は本当に素晴らしく、彼女の歌声が聴けるだけでも、この映画を観た甲斐はあるとも言えます。
英語の原語の歌詞もありますが、それをうまく作品に合わせて日本語化した歌詞も絶妙で、英語版、日本語版、両方合わせて観てみたくなる作品でした。