サンクタム／ Sanctum

2011/8/26 外国映画さ行, 映画レビュー

ジェームズ・キャメロンの盟友であり、水中探検家かつ映画作家であるアンドリュー・ワイト氏。
洞窟の中に閉じ込められたという、彼の実体験を元にした映画『サンクタム』は、美しい巨大洞窟の中にある水中世界の素晴らしい美しさと、偉大なる自然の恐ろしさ、そして自分を信じて道なき道を進むオトコの生き様を3Dで描き出した映画です。

なんだかついつい息を止めながら観てしまって、試写室を出た後、思いっきり呼吸が出来る世界に生きていることに、なんだか大きな喜びを感じてしまいました。。。
考えてみたら、私、水にもぐるの怖いんだった。。。

＜STORY＞
パプア・ニューギニアの奥地にある巨大洞窟エスペリト・エサーラで行われている、洞窟調査プロジェクト。ある日、洞窟付近に巨大サイクロンが襲来し、洞窟に大量の雨水が流れ込む。その時、洞窟深部にはリーダーである洞窟探検家・フランクやフランクの息子・ジョシュ、プロジェクトの出資者である実業家・カール、カールの恋人・ヴィクトリアらがいた。彼らは入り口が水没した洞窟に取り残され、ケイブ・ダイビングで脱出口を探し始める…。

＜Cheeseの解説＞
ジェームズ・キャメロン自らが改良したフュージョン・カメラ・システムで撮影された巨大洞窟の中の3D映像が売りの一つであるこの作品。
前人未到の“聖域（サンクタム）”である巨大な洞窟の中の映像を、美しく神秘的に描いています。

ストーリーは、巨大洞窟の中に閉じ込められた人びとが、洞窟の奥が海とつながっているだろうという推測のもとに、洞窟の中を進んで行くというもの。

物語の中心人物は、探検隊のリーダー・フランクと、その息子・ジョシュです。

自分の考えをあまり口にせず、メンバーたちに自分の判断に従うことを強いる寡黙なリーダー・フランク。
そんな父・フランクに反抗しつつも、父親に従うことしかできないことに苛立ちを感じている若者・ジョシュ。

この二人の親子の葛藤と愛が、この作品のテーマのひとつでもあります。

彼らと一緒に洞窟に閉じ込められた中には、勝手なことばかり言う出資者のカールと、その恋人のビクトリアたちがいます。
彼らが身勝手な行動をとるせいで、みんなが危機に陥ったり、命を落とすメンバーも出てきます。

洞窟というせまい空間の中で、ライトなどの灯りも少なく、ボンベの中のエアーも限られている…。
こんな、装備も限られた極限の空間の中で、互いに不信感を抱きながらもどのようにサバイブしていくのかが、この作品の大きな見どころと言えましょう。

まあ、ストーリーはね…。
『ポセイドン』とか『ポセイドン・アドベンチャー』とか、あの辺りをどうしても思い出してしまう展開ですが、スケールの大きさは段違い。
洞窟の見取り図もなく、進んだ先に道があるという確証もなく、リーダーのフランクの経験則と、「この洞窟は海につながっているはずだ」という推測のみに従って前に進んでいかねばならない本作の登場人物たち。
次々に襲い来る試練を乗り越え、仲間の死を踏み越えて、生きるために進んでいかねばなりません。
エアーもないし、装備も少ないし、装備をどこかで調達できる見込みもないし、一瞬の判断ミスが死を招くという危機感は本作の方が上でした。

まあ、ジェームズ・キャメロンを始めとする製作陣にとっては、どんなにストーリーが似ていようと関係ないのだと思います。
とにかく「水の中の世界を撮りたい！」「水中洞窟の中の神秘の世界を、世界中に知らせたい！」という、半ば執念に近いものなのではないでしょうか。

大の大人たちが、すごいお金を集めて、すごい技術を結集して、自分の大好きなものを映画化して全世界に公開する…。
こんな贅沢が、他にあるでしょうか。
『アバター』、『アビス』で積み重ねた水中撮影の技術の粋を集めたこの映画『サンクタム』、大人の仕事人の趣味が結集した作品です。
趣味の結晶であるからこそ、自己満足に終わらず、きっちりとしたエンターテインメント作品に仕上げなければならないということがわかっているあたり、やっぱりジェームズ・キャメロンは名プロデューサーだと思います。

別コラム：オトコに見せたいこの映画『サンクタム』

『サンクタム』（109分／アメリカ／2011年）
原題：Sanctum
公開：2011年9月16日
配給：東宝東和
劇場：TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて
製作：ジェームズ・キャメロン
製作・脚本：アンドリュー・ワイト
監督：アリスター・グリアソン
出演：リチャード・ロクスバーグ／リース・ウェイクフィールド／ヨアン・グリフィズ／アリス・パーキンソン／ダン・ワイリー／アリソン・クラッチリー
公式HP：http://sanctum-movie.jp/

ポセイドン（字幕版）