【映画レビュー】サンローラン / Saint Laurent
1994年(『イヴ・サンローラン(原題:Yves Saint Laurent-Tout Terriblent)』)と2010年(『イヴ・サンローラン(原題:Yves Saint Laurent – Pierre Berge, L’Amour Fou)』)にドキュメンタリー映画となり、2014年には劇映画(『イヴ・サンローラン(原題:Yves Saint Laurent)』)として、ジャリル・レスペール監督、ピエール・ニネ主演で映画化されたデザイナー、イヴ・サン=ローランの生涯。
このイヴ・サン=ローランの人生を、再び劇映画としてスクリーンに映し出したのが、映画『サンローラン』です。
なぜ、このデザイナーの人生が、こんなにフィルムメイカーたちに愛されるのか…。
その答えは、映画を観れば、おのずとわかると思います。
<STORY>
スモーキングで女性のファッションに関する常識を覆したデザイナーのイヴ・サン=ローラン。1968年の彼は、公私共にパートナーであるピエール・ベルジェのメゾン拡大路線や、次々に押し寄せる仕事による過密スケジュールに苦しんでいた。薬でなんとか意識を高揚させて仕事をこなした彼は、クラブに繰り出したり、新たな愛人のジャック・ド・バシェールらと享楽に耽る。しかし、ある事件が起こり、ジャックはイヴの前から姿を消してしまう…。
<解説>
21歳でクリスチャン・ディオールの後継者となり、モンドリアン・ドレス、スモーキング、サファリ・ルックなどで、数々のファッション界の常識を覆してきた偉大なるデザイナー、イヴ・サン=ローラン。
パートナー、ピエール・ベルジェの尽力のもと、自分の名を冠したメゾンをどんどん拡大し、化粧品や男性用香水など、様々な分野までビジネスを広げた、天才デザイナーです。
私生活では、ピエール・ベルジェとゲイの恋人関係であることはよく知られつつも、ライバルでもあったシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドの恋人・ジャック・ド・バシェールとも愛人関係にありました。
自身のミューズでお気に入りモデルでもあったルル・ド・ラ・ファレーズ、ベティ・カトルーたちとも夜な夜なクラブに繰り出しては、ドラッグやアルコールにまみれた日々を送ったことも。
そんな、創作の苦しみから逃げるために送った堕落した日々のエピソードも含め、イヴ・サン=ローランは伝説のデザイナーなのです。
ジャリル・レスペール監督、ピエール・ニネ出演の映画『イヴ・サンローラン(原題:Yves Saint Laurent)』は、イヴ・サンローラン財団の協力を得て、ピエール・ベルジェにも認められたが故に、イヴの人生の隆盛を、教科書的に描いています。
ピエール・ベルジェとの出会いから、斬新なモンドリアン・ドレスで一世を風靡し、世の中にスターアイコンとして確立していく、美しき天才デザイナーとして描いているのです。
しかし、この映画『サンローラン(原題:Saint Laurent)』のアプローチはちょっと違います。
創造の苦しみに身を焼き、ピエール・ベルジェとの関係にも嫌気がさして新たな愛人に溺れ、ドラッグで昏睡状態になるようなイヴの混沌とした人生を、年代年代で切り取っているのです。
この作品で描かれているのは、けっして“良き市民”ではないイヴ・サン=ローラン。
彼の精神的な弱さや美に対するこだわりの強さ、繊細すぎる故に人を傷つけてしまう…そんな彼の姿は、時代の象徴としての魅力に満ちています。
“モードの帝王”としてファッション界に君臨し、膨大な富と美を手にしつつも、創作の苦しみに満ち、混沌とした彼の人生は、だからこそ人々を魅了するのです。
そして、だからこそ、フィルムメイカーをして、何度でも映画化したくなるような、魅力的な題材なのだと思います。
この作品のために減量したというサンローラン役のギャスパー・ウリエルは、はにかむような微笑を浮かべ、ナイーブなサンローランを見事に体現しています。
ベルトラン・ボネロ監督は、“モードの帝王”の負の面を、魅力的に切り取ってみせてくれました。
『サンローラン』(151分/フランス/2014年)
原題:Saint Laurent
公開:2015年12月4日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開
監督・脚本・音楽:ベルトラン・ボネロ
脚本:トマ・ビデガン
美術:カーチャ・ヴィシュコフ
衣装:アナイス・ロマン
出演:ギャスパー・ウリエル/ジェレミー・レニエ/ルイ・ガレル/レア・セドゥ/ヘルムート・バーガー/アミーラ・カサル/エイメリン・バラデ/ミシャ・レスコー/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/ヴァレリー・ドンゼッリ/ジャスミン・トリンカ/ドミニク・サンダ
Official Website:http://saintlaurent.gaga.ne.jp/
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