【映画レビュー】オン・ザ・ロード ／ On The Road

この映画の主人公であるサル・パラダイスは、ジャック・ケルアック自身をモデルにしています。
そして、サルに多大なる影響を与えるディーン・モリアーティは、ニール・キャサディという人物がモデルとなっています。
さらに、詩人のアレン・ギンズバーグ、作家のウィリアム・S・バロウズをモデルにした人物も登場します。

彼らは盗みを働いたり、ドラッグを楽しんだり、乱交したり、かなり奔放な日々を送っています。
物語は特に起承転結があるわけではなく、世間に反抗し、その日暮らしで流れるように路上の日々を送る若者たちのエピソードが連ねられているのです。

実はジャック・ケルアックが最初にを書いた時、登場人物はみな本名で描かれていたのだとか。
しかし、さすがにそれは問題があるだろうという編集者の判断で、役名を与えられたのだとか。

ディーンを演じたギャレット・ヘドランド、サルを演じたサム・ライリー、アレン・ギンズバーグをモデルにしたカーロ・マルクスを演じるトム・スターリッジら若手イケメン俳優たちが、享楽的でありつつもどこか満たされず、未来を探そうとする若者たちを、まだ子どもっぽさを残した表情で演じています。
対して、ディーンの妻たちを演じたクリステン・スチュワート、キルスティン・ダンストらは、映画が進んでいくにつれて現実を見つめる大人の女性の表情に変化していきます。

そしていつか旅は終わり、何も持たなかったかつての旅人は大人になり、名声と金を手に入れるのです。
かつての友人を、路上に残して…。

若き日のチェ・ゲバラの旅の日々をつづった映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』を手がけたウォルター・サレス監督は、本作でも“まだ何者でもない”若者の旅の日々を、美しく乾いた映像でまぶしく切なく映画化しています。

1950年代の若者たちを魅了し、”ヒッピーの聖典”と呼ばれたこの物語、現代の若者にはどう映るのでしょうか。
いい意味でも悪い意味でも若者が賢くなった現代、この映画を観て旅に出ようとする若者はなかなかいないのでしょうね。。。