【映画レビュー】信虎
悪虐非道な暴君というイメージのある武田信虎。
武田信玄の父親で、信玄に国を追われた信虎こと無人斎道有。
信玄の死後に、甲斐国へ帰還しようとする信虎の最晩年の姿を描いたのが、この映画『信虎』です。
主演の寺田農を筆頭に、日本映画界の実力派俳優たちが顔を揃えた本作、俳優たちの演技、細部にまでこだわった衣装や美術、歴史を感じさせる撮影ロケ地など、見どころの多い一作です。
STORY
武田信虎は息子の信玄に甲斐国を追われ、京都にいた。80歳の信虎の元に、信玄から軍配が届く。信玄から国を託されたと考えた信虎は、末娘のお直を連れ甲斐への帰国を目指す。信濃高遠城に入った信虎は、信玄の訃報と遺言を聞く。新たに武田家当主となった勝頼に「自分がふたたび国主として立つ」と信虎は告げるが、勝頼や臣下から却下されてしまう。信虎はかつて若かりし頃、身延山久遠寺の日伝上人に言われた言葉を思いだし……。
解説
黒澤明監督が武田信玄の影武者を描いた映画『影武者』が1980年に公開されてから40年。武田信玄生誕500年の記念イヤーである2021年に、信玄の父親である武田信虎を主人公とした映画が誕生しました。
武田家の物語として広く流布はしていたものの、誤りが多いと思われていた武田家三代の合戦の歴史などを記した軍書「甲陽軍鑑」。1990年に国語学者の酒井憲二の検証によって、本書の史料的価値が再評価されました。
映画『信虎』では、この「甲陽軍鑑」に記された信虎に関する出来事などを、柏原収史演じる柳澤保明(吉保)が子どもに語って聞かせるという形で描かれています。
信虎を演じるのは、本作が36年ぶりの主演作になる寺田農。齢80にして意気軒昂、異彩を放つ武田信虎を朗々と演じています。
この信虎、自らを甲斐から追放した信玄が軍配を送ってきたことをきっかけに、甲斐への帰還を目論みます。
しかし、信玄の弟である武田逍遥軒(信廉)や武田勝頼にも軽くあしらわれ、意気消沈……。
それでもめげずに修行に励み、特殊な能力を得てしまうのです。
武田家を守ためならなんでもやろうとする、この凄まじいバイタリティ。妄執とも言える彼の執念に、周囲の人々は巻き込まれるしかないのでした。
宮下玄覇率いるミヤオビピクチャーズ製作のこの作品、ミヤオビピクチャーズ代表の宮下玄覇氏がプロデューサーと脚本を担当。監督は金子修介ですが、宮下氏は共同監督も務めています。
この宮下氏、信濃国伊奈郡の郷士宮下帯刀を祖先に持つ歴史美術研究家。古美術や刀剣などの武具、茶道具にも造詣が深く、時代考証家としても活動しています。
今作の撮影では、宮下氏のネットワークを駆使し、これまで映画撮影に使用されたことがない古刹などで撮影が実施されています。評定のシーンなどでも、長い歴史を感じさせる床の黒光が、場面に更なる重みを感じさせているのです。実際に武田信虎の支援を受けたという雲峰寺などでも撮影が行われているそう。
また、衣装や美粧、甲冑など人馬の装束などにも徹底的にこだわっており、往時を感じさせる“本物”が使用されているのです。
また、戦いのシーンで聞こえてくる刀剣の音などもとてもリアル。斬る音、武器がぶつかる音もとてもリアル。
まさに戦国時代を体感できるような映画となっています。
戦国時代の異才、甲斐武田氏の勃興の礎となった武田信虎の晩年と執念を描いたこの作品。ある意味、現代の異才・宮下玄覇プロデューサーの執念が戦国時代を再現してみせた一作と言えるでしょう。
作品情報
『信虎』(135分/日本/2021年)
公開:2021年11月12日
配給:彩プロ
劇場:TOHOシネマズ日本橋ほか全国にて
監督:金子修介
共同監督・脚本・製作総指揮・プロデューサー:宮下玄覇
音楽:池辺晋一郎
出演:寺田農/榎木孝明/渡辺裕之/永島敏行/矢野聖人/谷村美月/荒井敦史/柏原収史/隆大介/伊藤洋三郎/左伴彩佳/杉浦太陽/石垣佑磨/堀内正美/安藤一夫/川野太郎/葛山信吾/永倉大輔/井田國彦/嘉門タツオ/螢雪次朗/橋本一郎/森本のぶ/剛たつひと/外波山文明/水島涼太/西川可奈子/奥山眞佐子/まつむら眞弓/北岡龍貴/田中伸一/清郷流号/鷲尾直彦/高谷恭平/塩崎こうせい/井藤瞬/上田実規朗/岸端正浩/髙月雪乃介/鳥越壮真/大八木凱斗/武田勝斗/青山金太郎/保坂直希/花澄/小堀正博/長尾卓磨/大久保ともゆき
Official Website:https://nobutora.ayapro.ne.jp/
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