メランコリア / Melancholia
ラース・フォン・トリアー監督が独自の目線でハッピーエンドを描いた映画『メランコリア』。
いわゆる“終末”を描いた物語ではありますが、“地球終わる終わる詐欺”になれた目から見ると、この終わり方はいっそいさぎよく感じられます。
うつ病気質の監督自身にとってのハッピーエンドはこういうことなんだろうなあと納得できる終わり方になっていますね。
冒頭15分の映像詩もあまりにも美しく、ストーリーもわからないままに映像に浸る歓びを味わえる一作です。
ラース・フォン・トリアー監督作品って、かなり好き嫌いが分かれる監督だと思いますが、この作品は平気な人が多いんじゃないかな。。。
少なくとも私は楽しめました。他の作品はニガテなんだけど。
<STORY>
うつ傾向のあるジャスティンはマイケルとの結婚を決め、姉・クレアの豪邸で結婚パーティーを行う。知人たちが揃う中、最初は楽しそうだったジャスティンだが、だんだんと浮かない顔に。やがてパーティーを抜け出し、奇妙な行動を取り始める。その頃、天体異常が起こり、メランコリアという惑星が地球に近付いていた。メランコリアによる地球滅亡の噂にクレアは恐れおののき、一緒に暮らし始めたジャスティンはかえって冷静になっていく。
<Cheeseの解説>
プロローグ、第1部、第2部に分かれたこの作品。
冒頭、観客は何の説明もされないまま、圧倒的で詩的な映像を見せられることとなります。
何が起こっているのか、人びとが何をしているのか、それは何を意味するのか、まったくわからないままに、映像の中に浸ることになるのです。
そして、第1部「ジャスティン」が始まります。
キルスティン・ダンスト演じるジャスティンの乗るリムジンが何度もハンドルを切り直すところから始まるこの第1部。
ジャスティンは、少しわがままだけれども、美しく幸せそうな花嫁。
と、最初は誰もがそう思います。
しかし、ジャスティンの結婚パーティが進むに連れ、ジャスティンの精神状態が“幸せな花嫁”と違うことがわかってきます。
うつ気質の彼女はだんだんとおかしな行動を取り始め、自分自身の結婚パーティと結婚を台無しにしてしまうのです。
シャルロット・ゲンズブール演じる姉・クレアは、そんなジャスティンに苛立ちながらも、やさしくサポートしています。
そして、後日、ある川のほとりで、ジャスティンとクレアは惑星メランコリアの存在に気付くのでした。
第2部「クレア」では、メランコリアは既に地球にかなり接近しています。
ジャスティンはリッチな夫・ジョンと子どもと暮らしている姉・クレアのもとに身を寄せて過ごしていました。
メランコリアの接近で地球が滅亡するという噂が流れ、クレアは不安に怯えていました。
しかし、夫・ジョンはクレアに正しい情報を伝えず、無事だと信じさせていたのです。
クレアの暮らす邸宅の敷地は広大で、普段外の人との接点もないクレアは、ある小川を境にジョンの作った結界の中にいました。
ジョンは家族を守ろうとするあまり、結界を作り、情報を統制していたのです。
家族で暮らしている安心感と情報がよくわからない不安がないまぜになり、今度はクレアの方が不安定になっていきます。
逆に、不安定だったジャスティンは、メランコリアの接近で明るさを取り戻し、快活になっていきました。
常に不安を感じていたうつ病気質のジャスティンと、通常は幸せで満たされていたクレア。
終末が近付いてきたとき、彼女たちが感じることはなんなのか…。
うつ病を患っていたラース・フォン・トリアーにとって、この作品はハッピー・エンドだそうです。
いつまでも続くと思っていた日常も、終末の日々も、世界は美しいもので満ちているのですね。なかなか気付けないけれど。
『メランコリア』(135分/デンマーク=スウェーデン/2011年)
原題:Melancholia
公開:2012年2月17日
配給:ブロードメディア・スタジオ
劇場:TOHOシネマズ 渋谷ほか全国にて
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:キルスティン・ダンスト/シャルロット・ゲンズブール/キーファー・サザーランド/シャーロット・ランプリング/ジョン・ハート/アレクサンダー・スカルスガルド/ブラディ・コーベット/キャメロン・スパー/イェスパー・クリステンセン/ステラン・スカルスガルド/ウド・キア
公式HP:http://melancholia.jp/
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